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イタリアはなぜ“悲劇”から立ち直り、欧州制覇を果たせたのか? 番記者が明かす舞台裏【現地発】

カテゴリ:国際大会

マルコ・パソット

2021年07月15日

「このファイナルは、個人のリベンジでもある」と語ったマンチーニだが…

現役時代もコンビを組んだヴィアッリ(左)がマンチーニ監督(右)を脇で支えた。(C)Getty Images

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 特定の誰かに頼っていないのは、得点者からも明らかだ。3ゴール以上を挙げた選手は不在で、インモービレ、ロカテッリ、ペッシーナ、インシーニェ、フェデリコ・キエーザが2ゴール、他にもニコロ・バレッラとレオナルド・ボヌッチが得点を挙げた。つまり、どこからでもゴールを狙うことができるのだ。これこそが本物のチームである。

 お題目のように日々唱えられる「ここにはレギュラーも控えもいない。全員が主力選手だ」は決して言葉だけではなかった。彼らは本当にそう感じていたのだ。

 このチームの基盤にあるのは友情だ。それは監督のマンチーニ自身にも言えることだった。指揮官を脇で支えたヴィアッリとは、ともにサンプドリアの黄金時代を作り上げた名コンビで“ゴールの双子”と呼ばれていた。

 そのヴィアッリは数年前に膵臓癌を患ったが、それを克服し、親友に請われて彼を助けるポストに就いたのだった。

 実は彼らは92年、今回の決勝の舞台であるウェンブリーでチャンピオンズ・カップ(チャンピオンズ・リーグの前身)の決勝を戦ったが、バルセロナに敗れた経験がある。

「このファイナルは、自分個人のリベンジでもある」

 決勝前夜マンチーニははっきりこう語った。だが、それはほんの一瞬で、すぐに代表監督の顔に戻った。個人のモチベーションよりも、監督としての使命を優先するのがこの男だ。
 
 ウェンブリーでの決勝でも、ヴィアッリはいつものようにマンチーニの数メートル後ろに控えていて、ボヌッチのゴールが決まると盟友の元へ走り寄って抱き合った。ドンナルンマが最後のPKを止めた後、彼らは互いの肩で泣いていた。一枚の絵のような、感動的なシーンだった。

 ヴィアッリは癌を克服したのと同じ精神で戦った。その強さが選手たちにも力を与えた。アレッサンドロ・フロレンツィは「彼はどう生きるかのお手本だった」と語っている。

 こうしたヴィアッリの助けも借りて、マンチーニはこのチームに勝利のメンタリティをもたらした。アッズーリに対する概念を変えた。まずはイタリア人の、そして世界中の人たちの――。これは単にスポーツの勝利だけではない。ロンドンの空に掲げたカップ以上に価値のあるものである。

文●マルコ・パソット(Marco PASOTTO)
翻訳●利根川晶子
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