サッカーをする上でカギを握る選手たちの働き口。といっても、就業支援は簡単なことではない。

「最近は地元の葛飾区の企業が手を挙げてくれるようになってきました。地元企業であればクラブも応援してくださいますし、こういったケースをもっと増やしていきたいですね」　
　と嬉しい変化への期待が増す。これまではGMの豊富な人脈に支えられていた部分が大きかったのだ。

「まずSNSを活用して知り合いの経営者に聞いてみます。そして選手個々のタイプ、そして選手本人の意向を聞いて、なるべくマッチしそうな企業を探していく。なかには大きな企業に就職できたケースもあります。ただ『練習や試合ができる』ようにお願いしていたのに、実際は企業内の価値観や風土で実現できないケースもありました。そういった経験を積んでいった結果、今は中小企業のオーナーや社長の知り合いと話をして進めていくのがもっとも良い収まり方をする気がします」

　実際、これまで就業支援をした選手たちのなかには、短期間で現場の監督責任者になった者もいる。サッカーをさせてもらうために、ただ身を置かせてもらうためにお願いするのではなく、企業の戦力になる有望な人材として推薦できる根拠が岩本GMにはある。

「南葛SCにいるのは、それこそJリーグ、もしくはJリーグに手が届くレベルまでサッカーを極めた選手たちばかりです。彼らはプレーヤーのピラミッドで見ればかなり上の方に属している。以前、体育会系採用が流行った時期がありました。今も一般企業では、ひとつのことを貫いてある程度の形に至った人間の評価が上がっています。つまり、サッカー選手としての能力が高いということは、社会人として仕事をする上での能力も高い。こういった考えを経営者の方にするようにしています」

　ちなみに、企業に入ることが全てではない。むしろ、個人事業主として働くことが選手にとって吉と出る部分もあるようだ。

「アパレルや飲食業で誰より働いていても、自営業であれば自分で労働時間や労働量を調整できる。それができる選手はコンディションを一定に保ちやすそうです。以前は雇われで、その後独立した選手も明らかにコンディションの上下が減り、レギュラーをキープできるようになった選手もいます」

　それぞれの選手たちとの定期的なヒアリングでは、仕事の話題になることも多い。そこで一つひとつ事情を汲み取りながらチームとしていかに最適解を導くか。岩本GMの頭の中には今、ひとつのビジョンがある。