いくら黒字が増えても、「黒星」まで増えたら…。
田邊:このマネージメントの問題は、実際にはもう少し根が深い。ニューカッスルでは、2007年にオーナーが交代しているわけで。
山中:そう。それまではフレディ・シェパードという、地元の富豪がクラブを持っていたし、周りの役員も子供の頃からクラブを応援してきた人たちが大半を占めていた。
だから田邊さんが2004年にパトリック・クライファートの単独インタビューをした時も、同族クラブ的な雰囲気があったじゃないですか?
田邊:ええ。山中さんの知り合いで、それこそシェパード一族の人が広報のサポートをしていたりしましたもんね。
山中:よく覚えてますね(笑)。彼は育ちのいいお孫さんだった。でもあの後、クラブはマイク・アシュリーという現在のオーナーに買収されて。そこからおかしくなり始めた。
田邊:現場も混乱しましたね。ケビン・キーガンがマイク・アシュリーと対立して、いきなり監督を辞めた頃はとくに最悪だった。で、そこからさっきも話に出た降格に向かっていく。
ただ問題なのは、単純に財政が逼迫してクラブが傾いたというパターンじゃないことなんですよね。実際問題、クラブの経営自体は堅調で、昨年もそこそこの収益をあげている。
山中:(アシュリーは)薄利多売なスポーツ用品のチェーン店で儲けた人だから、少しずつ黒字を出すのはうまいんでしょうね。でもフットボールクラブのオーナーとしては……。
田邊:素人。向いていないと言った方がいいのかもしれないけど。
山中:いくら黒字が増えても、「黒星」まで増えちゃ、ファンはたまったもんじゃない。サポーターズクラブの代表が「利益がピッチ上にまったく還元されていない」と文句を言うのは当然でしょう。
田邊:突き詰めて考えていくと、ニューカッスルの惨状は、サッカークラブの経営者はいかにあるべきかという問題になってくるんですよね。
たしかに無謀な補強をして赤字まみれになったり、ファイナンシャル・フェアプレーにひっかかったりするよりは、黒字を出した方がいいに決まっている。でもいくら経営が安定していていも、カネをケチりすぎて肝心のチームがガタガタになるというのは本末転倒なんですよね。
Jのクラブの場合には、まず黒字を出すことが求められているわけですけど、最適な運営とは何かという問題を考える上で、ニューカッスルのケースは反面教師にもなる。
山中:と思います。関連して僕がすごく疑問に感じるのは、いまのニューカッスルの経営陣に、クラブに対する愛情が本当にあるのかということですかね。だから今回、ふたたび2部に降格するようなことになったら、今度こそクラブを売却するんじゃないかとも言われている。
経営陣の体質が変わらないであろうことを考えると、究極の荒療治が必要なのかなという気がしなくもありませんが。
田邊:でも仮にニューカッスルが降格して、現在の経営陣がクラブを売却したとしても、以前のように地元の名士がオーナーに収まる可能性は……。
山中:少ないでしょう。むしろ多国籍企業グループか、海外の投資家の手に渡る可能性が高い。そもそもニューカッスルでは、名のある地場産業だったニューカッスル・ブラウン・エール(ビール)の工場でさえ、なくなってしまいましたから。かつてはニューカッスルのメインスポンサーだったのに。
田邊:ニューカッスルは、地方自治体の財政難も深刻化しているんですよね。2017年には、公共サービスが維持できなくなるという指摘さえある。
山中:大昔は造船とか炭坑の街でしたけど、ビールを除けばこれといった地場産業もなかったわけで。
田邊:街自体は、きれいで住みやすそうなんですけどね。ロンドン辺りに比べれば白い人たちの割合が高いけど、みんなフレンドリーで美人率も高い。
山中:スタジアムも最高ですし。でもいまやブラウン・エールは消え去り、サッカーも風前の灯火状態になってしまった。
山中:そう。それまではフレディ・シェパードという、地元の富豪がクラブを持っていたし、周りの役員も子供の頃からクラブを応援してきた人たちが大半を占めていた。
だから田邊さんが2004年にパトリック・クライファートの単独インタビューをした時も、同族クラブ的な雰囲気があったじゃないですか?
田邊:ええ。山中さんの知り合いで、それこそシェパード一族の人が広報のサポートをしていたりしましたもんね。
山中:よく覚えてますね(笑)。彼は育ちのいいお孫さんだった。でもあの後、クラブはマイク・アシュリーという現在のオーナーに買収されて。そこからおかしくなり始めた。
田邊:現場も混乱しましたね。ケビン・キーガンがマイク・アシュリーと対立して、いきなり監督を辞めた頃はとくに最悪だった。で、そこからさっきも話に出た降格に向かっていく。
ただ問題なのは、単純に財政が逼迫してクラブが傾いたというパターンじゃないことなんですよね。実際問題、クラブの経営自体は堅調で、昨年もそこそこの収益をあげている。
山中:(アシュリーは)薄利多売なスポーツ用品のチェーン店で儲けた人だから、少しずつ黒字を出すのはうまいんでしょうね。でもフットボールクラブのオーナーとしては……。
田邊:素人。向いていないと言った方がいいのかもしれないけど。
山中:いくら黒字が増えても、「黒星」まで増えちゃ、ファンはたまったもんじゃない。サポーターズクラブの代表が「利益がピッチ上にまったく還元されていない」と文句を言うのは当然でしょう。
田邊:突き詰めて考えていくと、ニューカッスルの惨状は、サッカークラブの経営者はいかにあるべきかという問題になってくるんですよね。
たしかに無謀な補強をして赤字まみれになったり、ファイナンシャル・フェアプレーにひっかかったりするよりは、黒字を出した方がいいに決まっている。でもいくら経営が安定していていも、カネをケチりすぎて肝心のチームがガタガタになるというのは本末転倒なんですよね。
Jのクラブの場合には、まず黒字を出すことが求められているわけですけど、最適な運営とは何かという問題を考える上で、ニューカッスルのケースは反面教師にもなる。
山中:と思います。関連して僕がすごく疑問に感じるのは、いまのニューカッスルの経営陣に、クラブに対する愛情が本当にあるのかということですかね。だから今回、ふたたび2部に降格するようなことになったら、今度こそクラブを売却するんじゃないかとも言われている。
経営陣の体質が変わらないであろうことを考えると、究極の荒療治が必要なのかなという気がしなくもありませんが。
田邊:でも仮にニューカッスルが降格して、現在の経営陣がクラブを売却したとしても、以前のように地元の名士がオーナーに収まる可能性は……。
山中:少ないでしょう。むしろ多国籍企業グループか、海外の投資家の手に渡る可能性が高い。そもそもニューカッスルでは、名のある地場産業だったニューカッスル・ブラウン・エール(ビール)の工場でさえ、なくなってしまいましたから。かつてはニューカッスルのメインスポンサーだったのに。
田邊:ニューカッスルは、地方自治体の財政難も深刻化しているんですよね。2017年には、公共サービスが維持できなくなるという指摘さえある。
山中:大昔は造船とか炭坑の街でしたけど、ビールを除けばこれといった地場産業もなかったわけで。
田邊:街自体は、きれいで住みやすそうなんですけどね。ロンドン辺りに比べれば白い人たちの割合が高いけど、みんなフレンドリーで美人率も高い。
山中:スタジアムも最高ですし。でもいまやブラウン・エールは消え去り、サッカーも風前の灯火状態になってしまった。