キャリアの終焉が見えると、1日の過ごし方がハッキリと変わった。
――さて、話が変わりますが、昨季限りで現役を退いた中村憲剛氏は、会見で35歳の時に40歳での引退を決めたと語っていました。その5年間でも活躍し、多くのタイトル獲得に貢献しています。引退が頭によぎると強烈なパワーを引き寄せるのかな、と感じました。鄭大世選手も今オフに一度引退を決断。キャリアの終焉を意識するようになると、また違ったエネルギーが漲るものですか?
「一度引退を決めたのは今オフでしたけど、35歳くらいからキャリアの終わりが見えていて、その頃からサッカー選手として1日の過ごし方がハッキリ変わっていましたよ。正直、清水で試合に出ていた33歳~34歳の頃は、あと5~6年はできると思っていたんですけどね。あっという間に試合に出れなくなった19年から、若手の頃と比べて毎日ベストを尽くすようになり、プロとしてやるべきことも完璧にやった。そうすると、昨季途中に新潟からオファーが届き、移籍して26試合に出て、9点を取った。報われるんですよね。それに比べたら、憲剛さんはもっと出来すぎなので、僕が引き合いに出して何か語るのは恐れ多い。それに、憲剛さんは5年後の引退を決めてからの話なので、同じ引退決断でも今の僕とは少し違うと思います」
――一度引退を決めたけど、一転して現役を続けるという点で?
「そうです。今の僕の場合は、後悔するか、しないかの戦いになる。『やっぱり引退しておけば良かった』と思わないようにしたい。もちろん僕も人間なので心の弱さが出るんですよ。この老体に鞭を打っているわけですから、2部練習だってきつい(笑)。それでも後悔しないために、今何ができるか、常に自分に問いただしています」
――それを行動に移す姿を若手も見ていると思います。
「そうですね、僕も尊敬されるベテランをたくさん見てきました。メンバー外や戦力外になっても、感情的にブレず、毎日ベストを尽くす選手たちを。そして僕も36歳になっていろいろと分かってきた。良い時も悪い時も長く続かないし、人として本当の真価を問われるのは苦しい時。思い通りにいかない時にどういう態度を取るかで選手の価値が決まる。だからどんな状況になっても一喜一憂せず、今までどおりプロとしてやるべきことを完璧にやり続けていく姿を見せていきたい」
「一度引退を決めたのは今オフでしたけど、35歳くらいからキャリアの終わりが見えていて、その頃からサッカー選手として1日の過ごし方がハッキリ変わっていましたよ。正直、清水で試合に出ていた33歳~34歳の頃は、あと5~6年はできると思っていたんですけどね。あっという間に試合に出れなくなった19年から、若手の頃と比べて毎日ベストを尽くすようになり、プロとしてやるべきことも完璧にやった。そうすると、昨季途中に新潟からオファーが届き、移籍して26試合に出て、9点を取った。報われるんですよね。それに比べたら、憲剛さんはもっと出来すぎなので、僕が引き合いに出して何か語るのは恐れ多い。それに、憲剛さんは5年後の引退を決めてからの話なので、同じ引退決断でも今の僕とは少し違うと思います」
――一度引退を決めたけど、一転して現役を続けるという点で?
「そうです。今の僕の場合は、後悔するか、しないかの戦いになる。『やっぱり引退しておけば良かった』と思わないようにしたい。もちろん僕も人間なので心の弱さが出るんですよ。この老体に鞭を打っているわけですから、2部練習だってきつい(笑)。それでも後悔しないために、今何ができるか、常に自分に問いただしています」
――それを行動に移す姿を若手も見ていると思います。
「そうですね、僕も尊敬されるベテランをたくさん見てきました。メンバー外や戦力外になっても、感情的にブレず、毎日ベストを尽くす選手たちを。そして僕も36歳になっていろいろと分かってきた。良い時も悪い時も長く続かないし、人として本当の真価を問われるのは苦しい時。思い通りにいかない時にどういう態度を取るかで選手の価値が決まる。だからどんな状況になっても一喜一憂せず、今までどおりプロとしてやるべきことを完璧にやり続けていく姿を見せていきたい」
――最後に新シーズンに向けた意気込みをお願いします。
「目標はあんまり言わないようにしていますが、全部の試合で気持ち良く勝って、サッカーを楽しみたいですね。そうして上に行けたら素晴らしい。キャリアの終わりが見え、一度引退を決めながらも、一転して現役を続ける。そして、これまでは川崎や清水、新潟などJ1経験があるクラブにすがってきた一方、これからはJ1を目指す〝新興チーム″に自分を捧げます。これは今までとは違う新しいチャレンジです。
今オフに辞めるか続けるかの相談をした憲剛さんに言われました。
『辞めたとしてもその判断を尊重するけど、中途半端に続けるなら辞めたほうがいい。覚悟を持って続けるなら、移籍先のクラブがお前に求めていることをやらないと失礼。それは必ずやらないとダメ』って。
J1昇格の大事なピースとして町田に呼ばれた今の僕には、この言葉がぴったり当てはまる。クラブに求められたことに対して中途半端な覚悟と努力で終わったら、僕は〝クソ″みたいな締め括りになるし、クラブの方々や僕に関わる周りの人たちもネガティブな感情になる。だから、36歳の僕に将来を見据えた誠意あるオファーを出してくれた町田のために、悔いが残らないよう毎日ベストを尽くしたい」
取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
※『サッカーダイジェスト』2月25日・3月11日合併号(2月10日発売)