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【連載】識者同士のプレミア放談「ポチェティーノのノリは部活の先生!? スパーズとセインツを語る」

カテゴリ:ワールド

田邊雅之

2015年04月24日

クーマンの下で吉田にもさらに頑張ってもらって。

戦前の予想をいい意味で裏切ったのが、クーマン政権1年目のセインツだ。サッカーの方向性そのものはスパーズよりも見えている、との高評価も。 (C) Getty Images

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田邊:そのポチェティーノが、昨シーズンまで監督をしていたサウサンプトンについてはどうですか? ストークに負けて7位に落ちてしまいましたけど、僕自身の印象はあまり悪くない。
 
山中:ダブルボランチが良くて、CBやGKも安定しているから、まず失点が少ない。シュネデルランの去就が騒がれた一方で、ワニャマに強豪の触手が伸びなかったのが大きい。吉田はレギュラー争いが続いていますけど、クーマン監督は1年目にしては、かなり良い仕事をしたと思います。自分たちなりの攻撃の形もあるし。
 
 もともとイングランドのメディアは、クーマンにあまり注目していなかっただけに、余計に評価は上がってきている。
 
田邊:そう。クーマンに対する注目度や期待感は、大陸側の方が高かったのは事実。マルティン・ヨルあたりよりもはるかに実績はあるのに、タブロイドや高級紙でクローズアップされたのは、ユナイテッド戦で「オランダ監督対決」が実現した頃からだった。
 
山中:クーマンは、ゲームマネジメントのバランス感覚もいい。リバプールのロジャースのように後ろから丁寧に組み立てていくのが好きな人だけど、ロジャースと違って守備もきちんとケアする。ましてやポチェティーノのように、無謀な攻めダルマになったりしない。
 
田邊:戦術家として懐が深いですよね。オランダ人監督らしく、きちんとポゼッションを高めていくサッカーができるし、シュネデルランとワニャマも地味ながら、きちんと役割をこなしている。サッカーの方向性そのものは、むしろスパーズよりも見えている。
 
山中:だから基本的にはこの路線でいいんでしょうけど、来シーズン、真剣にトップ4や6を争おうと思ったら、やっぱりストライカーが欲しい。ペッレの調子が落ちると、いきなり点が取れなくなっちゃうわけだから。
 
田邊:でも予算にも限りがあるわけで。セインツの関係者は、今年はクラブ史上、最高の黒字になったとか言ってますけどね。
 
山中:それこそクーマンのオランダルートで、若くて優秀なFWを連れて来られたりするといいかもしれない。守備陣では『デイリーメール』で、ニューカッスルからGKのクルルと右SBのヤンマートの“ダブルダッチ”強奪説が報じられてますけど。
 
田邊:もともとセインツは監督の人選にしても、選手のスカウティングにしてもかなり定評があるし。経営陣が変わっても、良い伝統は保たれていますよね。
 
山中:ええ。今シーズン開幕前は、選手の「出血大売り出し」に非難轟々だった新フロント陣も、すっかり「商売上手」と言われるようになって。イングランドの若手も多いし。だから蓋を開けてみたら、バーンリーのイングスが入ってきていたりするのかもしれないですけど、それはそれでチームカラーには似合っている。
 
田邊:いずれにしても、ああいうチームが上にきてタイトルレースを掻き回すのは、プレミア全体を活性化する意味でもプラスになる。去年のシーズンが盛り上がったのは、それこそポチェティーノ時代のセインツと、エバートンの奮闘によるところが大きかったわけで。
 
山中:今シーズンのサウサンプトンの場合は、かつてのスウォンジーのように、質のいいサッカーをして、そこそこ結果も出してきている。だから終盤に失速したとはいえ、かなり前向きな雰囲気でシーズンを終えられるんじゃないですかね。
 
田邊:実際にやってみたら、ちょっと厳しかったというだけで。監督やサッカーの質がこれだけ変わったのに、CLの夢も見られた。
 
山中:そう。シーズンが開幕した頃、ほとんどのメディアが「崩壊候補」に挙げていたことを考えれば、むしろ予想以上に収穫があったと言っていい。これは間違いないでしょう。
 
田邊:そして来シーズンは、クーマンの下で吉田にもさらに頑張ってもらい、完全にレギュラーに定着してもらうと。
 
山中:そうですよ。武藤のチェルシー入りがどうなるかはともかく、吉田はいまや唯一の日本人プレミアリーガーですから。
 
田邊:セインツとスパーズの今後を占う意味でも、今週末の直接対戦はかなりおもしろそうですね。
 
山中:ちょっと田邊さん、アーセナル対チェルシー戦をお忘れなく(笑)。
 
構成・文:田邊雅之
協力:山中忍
 
【識者プロフィール】
田邊雅之
1965年、新潟県生まれ。『Number』をはじめとして、学生時代から携わっていた様々な雑誌や書籍の分野でフリーランスとして活動を始める。2000年からNumber編集部に所属。プレミアリーグ担当として数々の記事を手がけた後、南アフリカW杯を最後に再びフリーランスとして独立。主な著書に『ファーガソンの薫陶』(幻冬舎)、翻訳書に『知られざるペップ・グアルディオラ』(朝日新聞出版)」等がある。最新の翻訳書は『ルイ・ファンハール 鋼鉄のチューリップ』(カンゼン)。
 
山中忍
1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、チェルシーのサポーター。
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