楽しんで勝つ。それは『キャプテン翼』でもよく描かれている。まさにサッカーをする者の希望の原点だろう。ただ現実は、なかなかそうはいかない。だからいろんな考え方が派生する。では森監督の志向するサッカーは理想論なのかといえば、違う。具体的に実現するだけのノウハウがあるからだ。
「長く育成部門にいた影響は大きいかもしれません。僕も指導者を始めたての頃は、目の前の勝利を目指していたこともありました。でも育成として選手の将来を考えた時に、それでは難しい。昨シーズンにブレイクした三笘薫選手(川崎フロンターレ)や、2019年にJリーグMVPを獲得した仲川輝人選手(横浜F・マリノス)を小学生や中学生の頃から見ていましたが、勝利は目指しつつも個性を伸ばすことが大事だと重視するようになりました。当時は勝利と育成の間で葛藤して、いろいろ試行錯誤して模索して、でも確実に掴めたものはなかったんです。でも、その後Jリーグトップチームのコーチをしている時に掴めたんです」
長く探してきた答えのようなものが見えた時の衝撃はいかばかりだったか。この体験が、今の森監督の礎になっている。選手自身も、指導者も、そして見ている者も楽しんで喜べるサッカー。そして今、このサッカーを南葛SCで表現すべく動き始めた。
では「面白くて強いサッカー」をどうやってチームで、そして関東リーグでの戦いで表現していくか。森一哉監督インタビュー第2回では、さらに話を具体的に落とし込んでいく。
※後編に続く(次回は2月23日に公開予定です)
取材・文●伊藤 亮(フリーライター)
Supported by KLabGames
