『Ｈ』
ヘレナ
「彼女は俺の息子たちの母親だ。そして本当に、本当に忍耐強い。俺と一緒にいるってのは、マジで大変なことだと思う。うちの家族は４人だが（さらに犬とミニブタがいる）、有名だからって俺がみんなの上に君臨しているわけじゃない。だれもが自分の場所を、均等に25％を占めている。俺たちは４人ともが、家族の中で同じ重要性を持っていて、それでバランスが取れているんだ。

　俺は自分がすべきことをするし、彼女もそうだ。意見も自由に言い合うが、互いに他人の領域には口を挟まない。彼女は子供たちを育てるという重要な役割を担い、今はスウェーデンで１人でそれをやってくれている。彼女にいろいろなアドバイスを尋ねることはあるが、チームを変える時には彼女の意見は求めない。サッカーで俺の領域だからだ。移籍する時に俺が言うのは、『荷物をまとめろ』だけだ。そして彼女は、いつもそれに従ってきてくれた」

「ヘレナと一緒になってから、もうかなりの月日が経つ。最初に彼女を見たのは、マルメの中心地だった。俺はローゼンゴード、移民の多いゲットー（貧困街）に住んでいたから、町の中心部になんて行ったことなどなかった。17歳の時に初めてそこに行った時は、街いく人がみんな金髪で、まるで映画見ているみたいな気がしたよ。俺の住んでいるところとは別世界だった。そんなマルメが気に入った俺は、時々夜に遊びに行くようになった。そしてある日、俺は駅でタクシーから降りてくる彼女を見かけた。『ワオ！　俺はいつか絶対彼女と知り合いになってやる!!』って、隣にいた弟に言ったもんさ。彼女は他の誰とも違って見えたんだ」
 

「後に共通の友達がいると知った俺は、連絡先を手に入れてさっそく彼女にメールを送った。彼女は俺が誰かも分からなかったと思う。だから俺はメールに、『俺はあの赤い車に乗ってた――』と書いた。そう、その時の俺は真っ赤なフェラーリに乗っていた。まさにクソ野郎の象徴だよな。でも、ゲットー育ちの男には、高級車を持つのはひとつの喜びだった。自分がそこから抜け出した、成功したって証みたいなもんだったから。

　当時は19歳で、アヤックスと契約したばかりだった（2001年）。彼女は俺をまるでガキみたいに扱ったけど、俺は諦めなかった。彼女の目にできるだけ成熟した大人に映るように努力したもんさ。そしてユベントスに移籍した時（2004年）に、俺たちは一緒になり、彼女はトリノまで来てくれた。そして今でもまだ、俺たちは共にあるんだ」

interview by Serena GENTILE
translation by Akiko TONEGAWA
（C）Sportweek,il magazine de La Gazzetta dello Sport
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※ワールドサッカーダイジェスト１月21日の特集は「名門ミラン、復活」。イブラヒモビッチとアンブロジーニの対談をはじめ、マルディーニTDのインタビュー、戦術分析、トップチーム全選手の貢献度査定、監督＆フロントの物語など、ロッソネーロを総力特集している。