もう一つ、この試合で触れておきたいのは、森保ジャパンの３バックの守備のやり方です。この日、試合開始から採用してきた森保監督お得意の３−４−３ですが、守備は決して機能していませんでした。

　明確になったのは、守備の形は５−４−１であることです。３−４−３のチームの守備の形は、５−２−３と５−４−１に大別できます。違いはシャドーの選手のタスクです。サイドを埋めるのか、より中央前方を消すのか。それにより大体の守備位置が決まってきます。５−４−１では単純に、中盤から前の選手に人が足らず、少し受け身になりやすくなります。

　それ自体に問題はありません。ただ、“いつ”“どのようなとき”にボール周辺の選手の密度を圧縮して連動していくのかを、より緻密に定めなくてはなりません。しかし、パナマ戦では、そのスイッチを入れにいった選手を感じて、全体が同じ瞬間を「今だ！」と共有してボールを狩りにいくような場面はありませんでした。

　そうなると、結果的にこぼれ球が相手に渡ってシュートに繋げられてしまうことにもなります。良い形でボールを取り切ることも当然できないので、これでは良い攻撃も限られてしまいます。
 

　ただこれも、３バックをどんな試合のために用意するのかによって考え方が変わってきます。この日見せたような待ち受けるような５−４−１であるならば、おそらくこの日のパナマには最適ではないでしょう。しかし、ここも選手のテストの意味合いが強かったと捉えれば、致し方なかったのかもしれません。ただ、個人的には３バックを採用する時点で、後ろが重くなることは必然なので、そこから“いつ”“どのようなとき”にその重くしたメリットを生かしてボールを奪いに行くフェーズに移行するのかを定めてほしいと思います。

　さて、二つの観点に絞ってパナマ戦を振り返ってみましたが、今遠征でのターゲットは言うまでもなく次のメキシコ戦です。相手にとって不足なし。ワールドカップベスト８の目標には格好のテスト相手です。伝統的な組織力に加えて、ラウール・ヒメネス、イルビング・ロサーノ、エクトル・エレーラ、エドソン・アルバレス、ヘスス・マヌエル・コロナとタレントも充実してきました。見どころ満載の試合となりそうです。


【著者プロフィール】
岩政大樹（いわまさ・だいき）／1982年１月30日、山口県出身。鹿島で不動のＣＢとし2007年から前人未踏のＪ１リーグ３連覇を達成。2010年の南アフリカW杯メンバーにも選出された。現在は解説者などで活躍中。