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「別のやり方があった」宮本恒靖が負った深い傷…ドイツ惨敗の代償【日本代表キャプテンの系譜】

カテゴリ:連載・コラム

元川悦子

2020年05月26日

盟友をグループの輪に入れようと試みるも…

最終戦は出場停止により、ピッチに立つことができなかった宮本。チームにとっても、彼にとっても厳しい大会となった。写真:サッカーダイジェスト

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 もうひとつの足かせとなったのが、ジーコ監督が特定選手を絶対視したことだ。その筆頭と言えるのが中田だった。彼と宮本は93年U-17世界選手権(現U-17ワールドカップ)からの付き合いで、ともに日の丸をつけて戦ってきた長年の盟友だ。しかし、ドイツをキャリアの集大成と考えていたこと、大会後に選手生活に区切りをつける決断を下していたことは明かさず、ひとりで黙々と準備に努めていた。他のチームメートともどこか壁を作っているように感じられ、その点は宮本も危惧していたようだ。

 ボン入りしてすぐの頃、気配りに長けた小野伸二(琉球)が「ヒデさん、一緒にボール回しをやりましょう」と誘い、中田もグループに参加したことがあった。が、それはわずか数日で終了。宮本自身も何度かきっかけ作りを試みたが、盟友は振り向かず、現役最後となるブラジル戦が終わるまでスタッフとボールを蹴っていた。

 そんな行動に宮本は寂しさと虚しさを覚えつつ、自身も肝心のブラジル戦で出場停止になる不甲斐なさを味わった。グループ最下位という結果も含め、あらゆる意味でキャプテンとしての力不足を痛感したドイツの一部始終はしばらくの間、深い傷となって消えなかったという。

「キャプテンとして別のやり方があったのかなと思いますね。いろんな考えを持つ選手がいたとしても、それをひっくるめてひとつの方向にもっていく強引さ、キャプテンシーを発揮できていたら、結果は違っていたかもしれないと思うんです。『みんな頑張れよ』という感じじゃ足りなかったのかなとね」

 ドイツ・ワールドカップから数年後、宮本はこうつぶやいたことがあった。それは海外に出て、さまざまなリーダー像を目の当たりにしたことが大きい。レッドブル・ザルツブルクの同僚だった当時のクロアチア代表主将、ニコ・コバチ(バイエルン前監督)などは、仲間に有無を言わさず「こっちを見ろ」と引き付ける強烈なカリスマ性と圧倒的統率力を備えていた。

 異様な重圧がのしかかる中、結果を求められるワールドカップのキャプテンというのは、ある意味、「嫌われ役」になるくらいの図太さが必要なのかもしれない。宮本の苦く辛い経験は、その後の長谷部誠(フランクフルト)や吉田麻也(サンプドリア)にしっかりと引き継がれていると言っていい。

文●元川悦子(フリーライター)
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