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僕らの現実。ドラッグや酒に走り、そして死に至る宿命――【元アルゼンチン代表DFの手記/第1章】

カテゴリ:ワールド

サッカーダイジェストWeb編集部

2020年05月24日

瞼を開けられなくなった団地でのフットボール

プラセンテ少年も参加した団地対抗戦が行なわれた“カンチャ”の様子。コンクリートのピッチで繰り広げられる試合は激しかったという。 (C) Gentileza/AJ

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 準決勝が始まると、カンチャは熱狂の渦と化していた。そして、相手にソンブレーロ(※浮き球で相手の頭上を抜くこと)をかました僕は、そのお返しに強烈な肘打ちを食らった。右目は腫れ上がり、肘打ちを受けた直後から瞼を開けることもできなくなった。

 頭の中で星がキラキラして、木星と土星まで見えたくらいだ。その悔しさを噛み締めて、唾を飲み込んだ。そして、真顔で「何でもないさ、大丈夫だから心配するな」と言った。何事もなかったかのように、そのまま試合が進行するように振る舞ったんだ。

 ああいう所で起きるあのような瞬間が人格を作るのだと気づいたのは、それから何年も後のことだった。物事を弁えられるようになるかどうか、ということだ。
 
 苦戦の末に僕らは7-4で勝った。そんな忘れ難い準決勝の後の決勝は余裕だった。こうして僕は、この謎に満ちたサッカーという世界で初めて金を手に入れた。あんなにたくさんのまとまった金を手にしたことはなかった。

 僕らはすっかり勝者の気分になって、賞金を使い果たし、「この仲間(カテゴリア77)となら何でもできるんだぜ」とみんなに叫んでやりたくなったが、もう夜中の3時でどこも閉まっていて、出かけられるような状況じゃなかった。

 どれだけ無敵と思い込んだところで所詮は15歳のガキの集団だ。それに、いくら僕がチームで一番クールな2人から庇ってもらっていたといっても、家ではお袋が夕飯をこしらえて、スパイクを洗うために待ってくれていた。そう、そんな時間になってもお袋は僕が帰るのを待っていたんだ。

――第2章へ続く。

文●ディエゴ・プラセンテ(現アルゼンチンU-15代表監督) text by Diego Placente
コーディネート●クリスティアン・グロッソ coordination by Cristian Grosso / La Nacion
訳●チヅル・デ・ガルシア translation by Chizuru de GARCIA

※『サッカーダイジェストWeb』は、『ラ・ナシオン』紙の許諾を得たうえで当記事を翻訳配信しています。
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