「いいから黙って、俺をハグしろ!」
1986年6月22日、アルゼンチンの天才は、サッカー史に残る「伝説のゴール」を決めた。
メキシコ・ワールドカップの準々決勝、イングランド戦。この試合を伝説的なものへと昇華させたのは、アルゼンチンの10番を背負っていたディエゴ・マラドーナだった。
80年代初頭に両国間で勃発したフォークランド(マルビナス)紛争の影響から、「(紛争の)リベンジを考えていた」と燃えていたというマラドーナが世界中の人々の目を一瞬にして向けさせたのは、スコアレスで迎えた51分である。
敵ゴールへ向かってドリブルを仕掛けたマラドーナは、前線のホルヘ・ヴァルダーノへパス。しかし、それをイングランドDFが懸命に足を伸ばしてGKピーター・シルトンに浮き球のバックパスを送る。その時だった。リターンパス狙いでゴール前に突進したマラドーナが、迷うことなくジャンプ。わずかに反応が遅れたシルトンの目の前でボールを捉えて、ゴールに流し込んだ。しかし、それは頭ではなく、本人いわく「神の手」という名の左手によるものだった。
サッカーの母国民たちを「とんだペテンだ」と憤慨させ、アルゼンチンの国民を沸き返らせた「神の手」の舞台裏を、張本人が34年の時を経て振り返った。
現地時間4月16日、アルゼンチン・サッカー協会の動画メディア『AFA Play』でリバイバルされたインタビューでマラドーナは、「最初は何があったかわからずに後ろを振り返ったらボールはゴールにあった」と当時の様子を回想した。
メキシコ・ワールドカップの準々決勝、イングランド戦。この試合を伝説的なものへと昇華させたのは、アルゼンチンの10番を背負っていたディエゴ・マラドーナだった。
80年代初頭に両国間で勃発したフォークランド(マルビナス)紛争の影響から、「(紛争の)リベンジを考えていた」と燃えていたというマラドーナが世界中の人々の目を一瞬にして向けさせたのは、スコアレスで迎えた51分である。
敵ゴールへ向かってドリブルを仕掛けたマラドーナは、前線のホルヘ・ヴァルダーノへパス。しかし、それをイングランドDFが懸命に足を伸ばしてGKピーター・シルトンに浮き球のバックパスを送る。その時だった。リターンパス狙いでゴール前に突進したマラドーナが、迷うことなくジャンプ。わずかに反応が遅れたシルトンの目の前でボールを捉えて、ゴールに流し込んだ。しかし、それは頭ではなく、本人いわく「神の手」という名の左手によるものだった。
サッカーの母国民たちを「とんだペテンだ」と憤慨させ、アルゼンチンの国民を沸き返らせた「神の手」の舞台裏を、張本人が34年の時を経て振り返った。
現地時間4月16日、アルゼンチン・サッカー協会の動画メディア『AFA Play』でリバイバルされたインタビューでマラドーナは、「最初は何があったかわからずに後ろを振り返ったらボールはゴールにあった」と当時の様子を回想した。
「俺はワンツーをやろうと思ってボールをヴァルダーノへ出した。だけど、あいつは俺に返せなかった。そしたら、確かサンソンがボールを蹴り上げたんだ。でも、俺はボールがGKに取られるだろうと思っていた。かなり高く上がっていたからね。それでも、『下りてこい、下りてこい』と思っていた。その時にアイデアが沸いた。それで頭と手を使うことにしたんだ」
さらにチームメイトたちをもマラドーナは誤魔化したという。
「シルトンはボールがどこにあるか分かっていなかった。それで俺も振り返ったらボールはネットに入っていた。そして叫んだんだよ。『ゴールだ! ゴールだ!』とね。そしたら、仲間のバティスタが近づいてきて言うんだ。『だけど……手を使ったよな?』って。
咄嗟に言ったよ。『黙れよ! いいから黙って俺をハグしろ』とね。それでみんなが俺をハグし始めたんだけど、ヴァルダーノが『なぁ手を使ったのか? 教えてくれ』っていうから『後で教えてやる。台無しにするなよ』と言い返した」
「FIFAが主審と判定について話すことを禁じていた」とするボグダン・ドチェフ副審と「ラインズマンが判定するのを待っていた」というアリ・ベンナシュール主審の間に生じた考えの乖離もあって、イングランド側の猛抗議も実らずにマラドーナの「神の手」による伝説のゴールは誕生したのだ。
その4分後にイングランドを、ただただ沈黙させた「5人抜きゴール」という魔法のような一撃を決め、永遠の伝説となったマラドーナ。彼は同メディアのインタビューの最後にこう言い残した。
「8万人もの人々があの瞬間、私が手を使ったことに気づかなかった。わかるか? 間違えたのは主審だけじゃないんだよ。スタジアムにいる8万人を超える人間が同じように見間違えたんだよ」
構成●サッカーダイジェストWeb編集部