「イレギュラーはしないんですけど、同じ人工芝といっても会場によって感覚が全然変わってくるんです。南葛は2会場で練習していますが、その2つでも質が違うし、試合会場によってもいろんな種類がある。だからウォーミングアップの時からちゃんとアジャストしていかないと感覚がズレて思い通りのプレーができないな、と感じてました。人工芝の違いは面白い発見でしたね」
だが、この人工芝の影響もあってか、夏場にケガで1か月半ほど戦線離脱をしてしまう。本人曰く「プロ入りしてからこれまで19年間で最も長かったケガ」だった。「みんなも同じ条件なので自分だけの問題ではないですが」と前置きしつつ、怪我の要因を次のように語った。
「理由は5つほどあって。まずは硬い人工芝で地面からの負荷がJリーグの時より強くなったこと。そして練習でも試合でも移動時間が長くなったこと。アウェーは当日移動で調整時間が以前ほど確保できなかったこと。さらにこれまでは週1回は入れていたマッサージを入れていなかったこと。あと平日に仕事をしていることも影響はあったと考えています」
1日24時間をサッカーに費やせない生活リズムの中、いかに最善の準備をするか。
「考えてやっていたつもりでも、結果としてケガをしてしまったのはショックでした。そういう意味では、準備の仕方は社会人の方がプロより難しいと思います」
「やっていないと不安になるタイプ」と自覚していたが、夏以降、いま一度準備を見直した。心がけたのは“自分の身体との対話”だ。
本当に疲れを感じる時は知り合いにマッサージを頼み、1週間の流れの中で負荷のかけ方を変える。試合後の週明けに取り入れていたダッシュを思い切って取りやめたり、自主トレ時の負荷を軽くしたりした。自主トレは自宅周辺の走り込みや庭での体幹や腹筋。特に走り込みは1周するとちょうど区切りのいい距離になる道路があったが、アスファルトを走ると負荷がかかるので汗をかく程度に強度を弱めたり、身体への衝撃が緩むタータンで舗装されている近場の陸上トラックまで移動して走り込むようにした。
「捉え方次第ですが“ここまで環境が変わっても戦えている”という気持ちも正直ありました。でも、ピッチ上でもピッチ外でもちょっとずつ試行錯誤しながらバランスを見ていった感じはありました」
周囲から期待を浴びる一方で、じつは人知れず調整に心を砕いていた現実がそこにはあった。(文中敬称略)
※ 第2回に続く。次回は11月5日に公開予定です。
取材・文●伊藤 亮
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