試合前、このレスター戦が武藤の今季を占う上で重要なターニングポイントになると考えていた。絶対的なエースが不在である今、ゴールの結果を残せば序列は一気に跳ね上がる。チームが不振を極めているだけに、例えばレスター戦に勝利していれば、武藤を２トップの一角に入れた４-４-２が基本布陣になる可能性もあった。

　しかし、これで先発の道が完全に閉ざされたわけでもない。レスター戦の前、スティーブ・ブルース監督は武藤を先発で起用した理由について「リーグ杯のレスター戦で印象に残るプレーを見せた。チャンスを与えるのに相応しいと思った」と説明した。８月28日に行なわれたリーグ杯２回戦のレスター戦で１ゴールを挙げた武藤を評価し、レスターとの相性の良さを買って起用したと話していたのだ。また、クラブ広報によると「ここ数週間、武藤は練習で非常に良いプレーを見せている」という。こうした監督やクラブ内での評価が、突然の先発起用につながった。リーグ戦の先発に９か月の時間を要したが、次のチャンスは意外と早く訪れるかもしれない。
 

　気合いが入っていた分、落胆とやりきれなさは大きかった。だが、下を向いてばかりもいられない。「ファンも今日の内容で不満が溜まっていないわけがない。自分としては身体も動いている。サポーターのためにも勝利を届けたい」と力を込め、ホームで行なわれる次節のマンチェスター・ユナイテッド戦に向けて前を向いた。

取材・文●田嶋コウスケ