「サッカーを楽しみたい」
それはサッカーをプレーすることへの飢え、渇望の表われだったのではないか。話を聞いていて、ふとそう感じた。
「高橋先生がいて、Jリーグを目指している。しっかりした目標をもって、東京都の1部からこれからって時に自分が携われる。30歳前の年齢で身体も動くし経験も積んでいる。自分にとって一番いい状態で南葛SCの力になることにやりがいを感じています。サッカー選手としてまだまだ上手くなりたいし成長したい。その成長をチームとともにしていきたい。これはJリーグにいたら考えなかったことかもしれません」
チームとしては主にボランチ。守備もしつつ、広い視野と高度な技術を駆使して攻撃のタクトを振るう。2019年シーズンからはキャプテンにもなり、誰もが認める中心選手として存在感を発揮し続けている。
「改めて“サッカーが好きやな”と思いました。これまでもずっと思ってましたけど、どこか疑っていた自分もいたような気がします。“どうなんやろ?”って思っている節もあって。でも南葛SCに来て、プレーすることはやっぱり楽しいなって。サッカーが好きなことを再認識させてくれました。いろいろな難しさはありましたし、ありますけど、でも楽しいです。Jリーグの時とは違った楽しさがあるというか」
南葛SCに来て知った楽しさとは何なのだろうか。「なんやろ」と言ってから続く言葉が発せられるまでにしばし間が空いた。
「…感覚的になんですけど、今までは自分のためにやってきた感じです。チームが勝つのは嬉しいし、順位を上げたい気持ちも当然あるんですけど、自分が活躍することが前提で。自分が活躍する、チームが勝つ、上に行く。それでプロとして評価を高めていく、という考え。極端な話、チームの勝敗に関係なく、自分のパフォーマンスがよければそれでよしとする考えもあったと思います。でも今は逆というか。どちらかというとチームが勝つことが最優先になっています。チームが勝つために自分に何ができるか、チームの勝利に貢献できるパフォーマンスをしたいというか」
南葛SCに来て飢えは満たされた。改めて自分を見つめ直すこともできた。さらに、新たな楽しさも感じている。だが、そこはプロ契約している選手。相当の覚悟をもってプレーしていることも付け加えておかなければならない。
「いろんな思いを抱いて南葛SCに来ましたが、最後まで悩んだことはカテゴリを落とすことでした。J2、J3のチームで活躍すればJ1でプレーする可能性はあったと思います。でも、一度Jリーグから離れてしまうと、もう一度Jリーグに戻ることは相当難しい。だからもうJリーグには戻れないと思っています。あるとしたら、それは南葛SCといっしょに上がること。それが一番の近道ですし、そうでありたいと思っています。順調にいけば35歳くらいでJリーグに戻れる。もちろんそれまで南葛SCが自分を必要としてくれてるかどうかですけど(笑)。そのためにも俺は結果を残していくだけ、頑張っていくだけなんです」
(第2回に続く。次回は7月31日掲載の予定です)
取材・文●伊藤亮
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Jリーグに戻る近道は「南葛SCといっしょに上がること」

J7から南葛SCとともにJリーグへ戻りたいという安田(28番)。まずは今季、関東社会人リーグ2部昇格を果たしたい。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

関東リーグ昇格やチームへの想い、さらには移籍にまつわる葛藤など、様々なテーマで話を訊いた。写真:徳原隆元