心優しいサポーターの愛に甘えるな。神戸は「日本のバルサ」になる覚悟を示せるか?

カテゴリ:Jリーグ

吉田治良

2019年05月01日

チームには純粋な能力値で外国籍選手に見劣りしない野心的なバックアッパーが数多く揃っている

サンペールの加入後に出番を減らしたバックアッパーにも、多くの実力者が揃っている。写真:徳原隆元

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 この点に関しては、川崎戦後の小川のコメントが的を射ているだろう。
 
「ゴール前ではもっと強引に行っても良かった。奪われることを恐れて、(前半は)それがなかった。(82分に古橋が1点を返した)得点シーンは、アンドレス(イニエスタ)が強引にボールを運んで崩したプレーが起点になったし、ああいうのを前半から出していかないと、やっぱりゴールは生まれない。(前半は)ボールを握ってはいるけど、ゴール前での積極性が足りなかった」
 
 川崎戦では、57分の郷家友太、68分の三田啓貴の投入以降、フィニッシュへの積極性と縦への推進力が生まれた。これが今季Jリーグ初出場となった郷家は、「流れを変えてやろうという強い気持ちで」ピッチに入ると、78分にあわやという際どいシュートを放ち、その4分後には相手GKの動きをよく見てラストパスを中央へ送り、古橋のゴールをアシストしている。

 セルジ・サンペールの加入後、出番を減らしている三田も含め、チームには純粋な能力値で外国籍選手に見劣りしない野心的なバックアッパーが数多く揃っている。正しい競争原理を働かせるなら、そうした人材を決して軽く扱ってはならない。川崎戦で言えば、故障明けの影響かボールがなかなか足につかなかったビジャを、果たして90分間プレーさせる必要があったのか疑問だし、川崎の若きボランチ、田中碧に影のようにまとわりつかれ、ジャッジに苛立つ場面が少なくなかったイニエスタにしても、それは同様だろう。
 
 ただいずれにせよ、失点後に腰が引けてしまうのも、90分を通してプレークオリティが安定しないのも、すべてはクラブの方針に選手たちが疑心暗鬼になっているからだと思う。リージョ監督の下、バルサ流のポゼッションサッカーの実現を目指してきたのに、いきなりその梯子を外されて、彼らは今、どこに向かって走ればいいのかさえ分からなくなっている。
 
 リージョの後を託され、再び現場に戻った吉田孝行監督は、「ファンマ体制のベースは変えない」と明言しているが、選手たちの迷いを払しょくするためにも、「バルサ化」という花火を打ち上げた張本人であるクラブ首脳陣が、より明確なメッセージを発信する必要があるのではないか。
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