多くの人が関わって歴史を作ってきたクラブ。だから余計に責任を。
――選手を伸ばすコツは?
「練習のなかでどれだけ選手が高い意識を持てるか、目的を持てるかが大事です。監督としては、そんな環境をどう作ってあげられるかが勝負。清水ユースの時も同様です。技術的なことだけ教わって上手くなるかと言えば、そんなはずはない。自分で考える習慣がすごく大切。例えばプロになった時、どうやって自分は試合に出るか、どうしたら上達するか、スランプをどう打開していくか、それらは全部、自分次第なんです。だから自分で考えられる人間でないと、どこかで壁にぶつかり終わってしまう。今の選手は技術や戦術に詳しいし、世界のサッカーに触れるチャンスも多い。取り巻く環境は素晴らしいんです。だけど、自分でどうサッカーを考えるかとか、自主的な習慣が薄れています。サッカー界に限った話ではありませんが、言われたことだけをやる“指示待ち”が増えていると感じます」
――清水の若手の多くは、伸び悩んでいる印象です。
「みんなそれぞれ良い部分があってプロになれたのに、良さを出し切れていない。石毛にも言いました。『全然伸びてないな』って。キツい言葉ですが、『お前のプレーはもう錆付いてるな』って言ったんです。ユース年代でアジア最優秀選手になったところで、それは過去のこと。今なにができるかがプロですから。そこを理解して貪欲にやってほしい。私はいつも若い選手に岡崎慎司のことを話すんです。プロ入り当初の彼は、本当に通用するのかっていうレベルだった。でも、みるみる成長していった。私は直接彼と関わっていませんが、当時監督だった健太も、『あいつがあんなに伸びるとは誰も思わなかった』って言っていました。じゃあ、なぜ彼が成長できたかって言えば、サッカーへの想いが他の人とは違ったから。足が遅ければ、オフの間もフィジカルコーチのところに行く。取材陣からメンタルの本を勧められれば、すぐに受け入れて読んでみる。貪欲さと素直さが、岡崎をあそこまでの選手にしたんです」
――先ほどから何度か名前が挙がった長谷川監督のG大阪とのホームゲームが、25節に控えていますね。最近、会話はありました?
「いや、全然してないですよ」
――なにか特別な意識は?
「いや、(向こうは)気持ち的に余裕でしょ(笑)」
――G大阪に大敗した試合が監督交代の引き金になったと思うんですが。
「う~ん、そうかもしれませんね」
――では最後に、サポーターにメッセージをお願いします。
「サポーターやOBなど、たくさんの方から激励の言葉をいただきました。清水は多くの人が関わって歴史を作ってきたクラブ。だから余計に責任を痛感しています。そのなかで、やはりみんなから応援してもらえるチームに作り直したいという想いが強い。亡くなった真田(雅則/元清水)や山田(泰寛/元清水)を含めて、それがみんなの願いだと思うんです。彼らのためにも、地域から愛され、地元の子供たちが憧れるようなチームを目指したいですね」
取材・文:増山直樹
【プロフィール】
大榎克己(おおえのき・かつみ)/1965年4月3日生まれ、静岡県出身。Jリーグ通算252試合・10得点。日本代表通算5試合・0得点。91年に清水に入団し、クラブのプロ契約第一号選手に。以降は清水一筋でプレーし、ポリバレントな活躍でクラブの黄金期を支えた。引退後は清水のコーチを経て、母校の早稲田大の監督に就任。2008年からは清水ユースを率い、14年7月にトップチームの指揮官となる。
※週刊サッカーダイジェスト8.26号(8月12日発売)より
「練習のなかでどれだけ選手が高い意識を持てるか、目的を持てるかが大事です。監督としては、そんな環境をどう作ってあげられるかが勝負。清水ユースの時も同様です。技術的なことだけ教わって上手くなるかと言えば、そんなはずはない。自分で考える習慣がすごく大切。例えばプロになった時、どうやって自分は試合に出るか、どうしたら上達するか、スランプをどう打開していくか、それらは全部、自分次第なんです。だから自分で考えられる人間でないと、どこかで壁にぶつかり終わってしまう。今の選手は技術や戦術に詳しいし、世界のサッカーに触れるチャンスも多い。取り巻く環境は素晴らしいんです。だけど、自分でどうサッカーを考えるかとか、自主的な習慣が薄れています。サッカー界に限った話ではありませんが、言われたことだけをやる“指示待ち”が増えていると感じます」
――清水の若手の多くは、伸び悩んでいる印象です。
「みんなそれぞれ良い部分があってプロになれたのに、良さを出し切れていない。石毛にも言いました。『全然伸びてないな』って。キツい言葉ですが、『お前のプレーはもう錆付いてるな』って言ったんです。ユース年代でアジア最優秀選手になったところで、それは過去のこと。今なにができるかがプロですから。そこを理解して貪欲にやってほしい。私はいつも若い選手に岡崎慎司のことを話すんです。プロ入り当初の彼は、本当に通用するのかっていうレベルだった。でも、みるみる成長していった。私は直接彼と関わっていませんが、当時監督だった健太も、『あいつがあんなに伸びるとは誰も思わなかった』って言っていました。じゃあ、なぜ彼が成長できたかって言えば、サッカーへの想いが他の人とは違ったから。足が遅ければ、オフの間もフィジカルコーチのところに行く。取材陣からメンタルの本を勧められれば、すぐに受け入れて読んでみる。貪欲さと素直さが、岡崎をあそこまでの選手にしたんです」
――先ほどから何度か名前が挙がった長谷川監督のG大阪とのホームゲームが、25節に控えていますね。最近、会話はありました?
「いや、全然してないですよ」
――なにか特別な意識は?
「いや、(向こうは)気持ち的に余裕でしょ(笑)」
――G大阪に大敗した試合が監督交代の引き金になったと思うんですが。
「う~ん、そうかもしれませんね」
――では最後に、サポーターにメッセージをお願いします。
「サポーターやOBなど、たくさんの方から激励の言葉をいただきました。清水は多くの人が関わって歴史を作ってきたクラブ。だから余計に責任を痛感しています。そのなかで、やはりみんなから応援してもらえるチームに作り直したいという想いが強い。亡くなった真田(雅則/元清水)や山田(泰寛/元清水)を含めて、それがみんなの願いだと思うんです。彼らのためにも、地域から愛され、地元の子供たちが憧れるようなチームを目指したいですね」
取材・文:増山直樹
【プロフィール】
大榎克己(おおえのき・かつみ)/1965年4月3日生まれ、静岡県出身。Jリーグ通算252試合・10得点。日本代表通算5試合・0得点。91年に清水に入団し、クラブのプロ契約第一号選手に。以降は清水一筋でプレーし、ポリバレントな活躍でクラブの黄金期を支えた。引退後は清水のコーチを経て、母校の早稲田大の監督に就任。2008年からは清水ユースを率い、14年7月にトップチームの指揮官となる。
※週刊サッカーダイジェスト8.26号(8月12日発売)より