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【回想コラム】急成長を遂げる五輪年代。北京世代の長友、岡崎が頭角を現わす転機となった一戦

カテゴリ:日本代表

浅田真樹

2014年08月22日

多くの新戦力が試される背景にあった反町監督の意図。

北京五輪予選を戦うU-22日本代表を率いていた当時の反町監督。2年後のW杯には5名の選手を送り込んだ。(C) SOCCER DIGEST

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 突然の「アポなし訪問」にもかかわらず、快く取材に応じてくれた反町に対し、単刀直入に質問をぶつける。マレーシア戦での選手起用の意図は、どんなところにあったのか、と。
 
「香港戦で(2次予選の)突破が決まったことによって、マレーシア戦には3つの意味合いがあった」
 
 反町はそう切り出すと、こちらの疑問に答えてくれた。
「まずは、カードがリーチ(イエローカードを1枚もらっている)の選手を使うことは避けなければいけなかった。もうひとつは、次のステージへ向かうための1試合として、新しい選手を試さなければいけなかった。そして3つ目は、この年代では(メンバーを固定した)ひとつのチームにこだわって熟成させるよりも、いろんな選手を呼んで、例えば新しく呼んだ選手が最終的に選ばれるかどうかは抜きにしても、その選手のサッカー人生をより刺激的なものにしたかった。この3つだな」
 
 加えて、10名もの先発メンバーを入れ替えるという大胆な選手起用ができたのには、あるひとつの理由があったとも明かす。
 
「あの時は、試合前に1週間近く合宿ができた。もし月曜日に集合して水曜日が試合という日程だったら、(新しい選手は)ちょっと選べなかっただろうね」
 
 静岡・御殿場で行なわれたこの合宿には、2次予選での出場時間が短かった選手に初招集の選手などを加え、総勢24名が選ばれた。反町は、あえてマレーシア戦に登録できる18名を超える数の選手を集めることで、互いを意識し合うように促し、意図的に競争心を煽った。試合を前に、メンバーから外れる選手が出ることも計算づくだった。
 
 それどころか、「本当は、もっと下の年代(当時のU-20代表世代)からも呼びたかった」と反町。「呼ぶに値する選手はいっぱいいたから」。
 
 残念ながら、当時はU-20ワールドカップを1か月後に控えていたために、彼らを合宿に加えることはできなかった。だが後に、森島康仁、内田、柏木陽介らが選ばれたことは、反町の言葉を裏づける。
 
 多くの新戦力を集め、選手の人となりまでを十分に見極めたうえで試合に臨む。決してぶっつけ本番で先発メンバーをほぼ総入れ替えにしたわけではなかったのだ。反町は言う。
 
「この世代っていうのはひとつのきっかけで大きく変わる。それは我々にとっても、(チームが変わる)プラスのきっかけになる」
 
 とはいえ、北京五輪代表のサッカーが当時、まだまだ未完成だったことも事実である。2次予選を5戦全勝できていたとはいえ、その内容は魅力的なものには映らなかった。
 
 そこで反町への質問を続ける。あの時、主力組を引き続き起用し、目指すサッカーを確立させようという考えはなかったのか、と。
 
「オレは、まったくそうは思わなかったな。この(従来の)メンバーではちょっと限界に来ているかなっていうのがあったから。だから、迷いはなかった」
 
 また、このマレーシア戦では、五輪世代が置かれた難しい立場を象徴するような選手にも、出場のチャンスが与えられていた。
 
 それが細貝萌である。細貝は長友らと違い、早くから北京五輪代表に選ばれ、すでにチームに定着していた。だが、彼の立場は控えがもっぱらで、ピッチに立つ機会はほとんど与えられてこなかった。
 
 細貝の評価が低かったということでは決してない。反町は3年前を懐かしむように「あの試合、萌は後ろ(DF)で使ったんだよな」と言い、彼についてこう語った。
 
「萌は当時、レッズで(ベンチ入りの)18人のメンバーにも入っていなかった。だから、ここでゲームフィーリングを掴まなくちゃならなかった。能力はあるのにと思いながらチャンスがなくて、あそこでやっと使えた。やっとだよ」
 
 この年代の代表は、所属クラブで活躍している選手をピックアップすればいいというものではない。逆に所属クラブで出場機会に恵まれず、くすぶっている選手に対してモチベーションを与える役割も持つ。五輪世代ゆえの様々な難しさを理解していたからこそ、反町はこう続ける。
 
「だから、あのマレーシア戦というのはすごく大きな意味があったんだよ」
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