鹿島と川崎に見るチャンピオンの美学。王者に求められる「勝ちっぷりと負けっぷり」とは

カテゴリ:Jリーグ

吉田治良

2018年11月15日

「チャンピオンは潰した相手の夢も背負って戦い続けなくてはならない」

3連覇を懸けた来季のリーグ戦はもちろん、カップ戦での川崎の戦いぶりが楽しみだ。写真:徳原隆元

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 悲願のACL初制覇で、トロフィーのコレクションは20に到達した。大舞台での勝負強さが、常勝・鹿島を支えている。華やかさはなくとも、その隙のない勝ちっぷりには、王者の威厳が漂っているだろう。
 
 鹿島のそれとは種類が異なるとはいえ、川崎もまた確固たるフィロソフィーを持った数少ないクラブであり、彼らがここから黄金時代を築き上げたとしても驚きはない。いやむしろ、こうした攻撃的なスタイルを持ったクラブが一時代を築き、Jリーグを牽引してほしいと願ってもいる。
 
 しかし、みずからの美学に溺れてしまうことの危うさも、覚えておく必要はあるだろう。KO率100パーセントのボクサーなど、滅多にいるものではない。ときにはクリンチに逃れることも、僅差の判定でベルトを死守することも大切なのだ。
 16年シーズンは天皇杯決勝で鹿島に、昨季はルヴァンカップ決勝でC大阪に敗れた。そして今季はACLで1勝もできずにグループリーグ敗退という屈辱を味わい、ルヴァンカップと天皇杯はいずれも準々決勝で姿を消している。カップ戦での脆さは相変わらずだ。
 
 確かに昨季は珍しくもたついた鹿島を土壇場でうっちゃった。さらに大島僚太など途中、主力に怪我人を抱えながらの連覇は、地力の証明でもあるだろう。それでもまだ頂点に立って日が浅く、少々ピュアな国内チャンピオンが、カップ戦に滅法強い百戦錬磨のアジアチャンピオンから吸収すべき点は、きっと少なくないはずだ。
 
 現役時代、勝ちっぷりと負けっぷりにこだわった長谷川穂積だが、引退後にはこんな言葉も口にしている。
 
「ボクシングは夢の潰し合い。チャンピオンは潰した相手の夢も背負って戦い続けなくてはならない」

 だから、簡単に負けてはならない──。
 
 3連覇の懸かったリーグ戦だけでなく、潰した相手の夢の大きさがダイレクトに伝わるカップ戦でも、ここ一番という重要な試合で、どこまで王者の矜持を示せるか。
 
 来季は、川崎のチャンピオンとしての資質が改めて問われる、大切なシーズンになりそうだ。
 
文●吉田治良(スポーツライター)
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