鹿島と川崎に見るチャンピオンの美学。王者に求められる「勝ちっぷりと負けっぷり」とは

カテゴリ:Jリーグ

吉田治良

2018年11月15日

ジーコに叩き込まれた勝利への執着心は、脈々と受け継がれている

したたかな安部のプレーは、ジーコが植え付けた勝利へのこだわりを感じさせた。(C)SOCCER DIGEST

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 C大阪の出来が今季一番と言っていいほど素晴らしかったのは確かだ。そんな相手に、苦しみながらも90分にPKで追いついた粘り強さは、称えられてしかるべきだろう。
 しかし、あの時間帯で、引き分けでも優勝が決まる状況で、なぜ勝ち越しゴールを狙いに行ったのかが分からない。
 同時刻キックオフの広島がベガルタ仙台に0-1で負けているという情報が、よもやピッチ上の選手に伝わっていなかったとは思えない。おそらく伝わってはいたが、戦い方は徹底されていなかったのだろう。
 
 あくまでも攻め続けるのが川崎の流儀なのかもしれないが、それでも「王者の作法」としてはいささか理解しがたかった。
 
 カップ戦のファイナルに負け続ける勝負弱さの根源が、リーグ連覇という偉業を成し遂げたその試合で垣間見えたのが、かえすがえすも残念でならない。
 
 負けて優勝が決まるのは、1ステージ制に限れば1996年の鹿島アントラーズ以来、2例目だという。
 川崎がすっきりしない形でリーグを制した翌日、奇しくもその鹿島がアジアの頂点に立った。
 ホームの第1レグで2-0の勝利を収め、優位な状況でテヘランに乗り込んだとはいえ、10万人の観衆を飲み込んだ完全アウェーの地で、そのリードを守り抜き、タイトルを掴み取ることは決して容易ではなかったはずだ。
 
 しかし、まるで世界中のブブゼラをかき集め、一斉に吹き鳴らしたかのような喧騒の中で、彼らは実にしたたかにそれをやってのけた。
 
 試合後の昌子源の言葉が印象的だ。
 
「うちが点を取るのは難しい。後ろがしっかりと責任を持って身体を投げ出さないといけないと、前半の早い段階で思っていました」
 
 恐ろしいまでの割り切りである。一度守ると決めたら、とことん守り抜く。ジーコに叩き込まれた勝利への執着心は、時空と世代を超え、現チームにも脈々と受け継がれている。それは、相手がピッチに倒れていてもプレーを止めず、イラン人たちに猛然と詰め寄られてもさらりと受け流した19歳の安部裕葵にも、不可解なジャッジでイエローカードをもらっても最後まで平常心を失わなかったブラジル人のレオ・シルバにも、等しくだ。
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