【現地発】ミランのガットゥーゾ昇格はなぜこのタイミングだったのか?

カテゴリ:メガクラブ

片野道郎

2017年11月30日

ガットゥーゾ・ミランは、いかなる戦術を用いるのか?

現役時代はリンギオの愛称通り闘志漲るプレーを身上としていたガットゥーゾ。指揮官となってからはクレバーさも見せている。(C) Getty Images

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 実際、ここからウインターブレイク(2018年1月6日)までは、ベネベント、ボローニャ、ヴェローナ、アタランタ、フィオレンティーナ、クロトーネと、6試合中4試合が2桁順位の下位チームとの対戦が続く。
 
 もし、首脳陣がモンテッラの手腕を信頼していたならば、ここまでの積み重ねをベースにチームを軌道に乗せるチャンスと捉え、あえて解任に踏み切ることはしなかったはずだ。
 
 逆に言えば、このタイミングを逃せばモンテッラを切ることは難しくなっていた可能性が高いということにもなる。ここで監督交代に踏み切ったことで、ガットゥーゾにとっては比較的難易度の低い試合を重ねながら自らのチームを固めていくチャンスが与えられたことになる。
 
 いずれにしても確かなのは、クラブ首脳陣と監督が一枚岩ではなくなった10月初めの時点で、新オーナーによるミランのニュープロジェクトは、当初に描いた道を踏み外したということだ。
 
 セリエA8節のミラノ・ダービー以降の不成績には、クラブとチームの内部に生じた軋轢が少なからず影響している可能性が高い。だとすれば、監督交代のタイミングは遅過ぎたくらいなのかもしれない。
 
 今回の監督交代は、不振の責任を指揮官に転嫁するというアリバイを使えなくなったという意味で、首脳陣にとっても自らを崖っぷちに追いやる決断だったと言うことができる。もはや、彼らに切れる手札は残っていない。
 
 ガットゥーゾは会見で、モンテッラにとっての最終形となった3バックを継承することを明言しているが、中盤から上は従来の3セントラル+2トップ(システムは3-5-2)ではなく、2セントラル+3トップの3-4-3が濃厚視されている。相手ゴールまでの最後の30メートルで、最も大きな違いを作り出すことができる右ウイングのスソを最大限に活かすことを考えているようだ。
 
 ガットゥーゾの初陣は、開幕14連敗中のベネベント(12月3日)だ。そこからボローニャ、ヴェローナと続く下位チームとの3連戦は、新体制を軌道に乗せる上では決定的な重要性を持っている。
 
 まずは、ガットゥーゾがチームにどのようなアイデンティティを与えようとするのか、そして、それがピッチ上でどのように機能するかに注目しよう。
 
文:片野道郎
 
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。ジョバンニ・ビオ氏との共著『元ACミラン専門コーチのセットプレー最先端理論』が2017年2月に刊行された。
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