【黄金世代】第5回・本山雅志「真紅の閃光~49勝2分け、3冠の金字塔」(♯2)

カテゴリ:Jリーグ

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年11月27日

寺西さんとの出会いは途轍もなくデカかった

高3の冬、週刊サッカーダイジェストのインタビューに登場。帝京の好敵手、中田浩二(左)との対談だ。(C)SOCCER DIGEST

画像を見る

 高校時代、本山には志波先生と並ぶ恩師がいた。かつて八幡製鉄サッカー部で監督を務め、全国有数の強豪に鍛え上げた人物、寺西忠成さんだ。この時、60代後半。すでに第一線の指導から退き、週に1~2回だけやってきては、東福岡の選手たちに極意を伝授していた。
 
 とりわけ本山は、才能に惚れ込まれたのか、つねに傍に置かれて指導を受けたという。八幡製鉄サッカー部は北九州市を本拠地とし、九州サッカーの礎を築いた伝説のチーム。北九州がサッカーどころなのもそこに起源があり、寺西さんは自身も暮らす北九州の出身である本山を、ことのほか気にかけていたのだ。本人も心酔しきっていたと語る。
 
「すんごい細かい局面の話とか、なにを質問してもすぐに明確な答をしてくれるんです。1ボランチなら1対2になった時にどうやって守るか、どうやって遅らせるか。個と個の駆け引きのところとかもたくさん教えてもらった。誰かが、寺西さんに『パスが通らない』って言ったんですよ。したら、『パスなんてボール1個あれば通るんだよ』と言って、ふたつのコーンのすごい狭い間をこれでもかってくらい通す練習をさせられた。シンプルだけど、確実に身に付く練習でしたね。寺西さんは車で北九州を往復してたんですよ。で、いつも助手席に座らされるのが僕で、理由は『寝ちゃうから話し相手になってくれ』(笑)。そこでもサッカーの話ばっかりしてましたね。タメになる話ばっかり。寺西さんとの出会いは途轍もなくデカかったんです」
 
 九州サッカー界のレジェンドは1999年1月14日、東福岡の選手権連覇を見届け、他界した。享年72。
 
 選手権で一躍脚光を浴びた東福岡だったが、本山の2年時は受難のシーズンを送る。主軸だった3年生が抜けた穴は想像以上に大きく、守備の要である3年生の古賀正紘は、アンダー世代の代表の活動で留守がちだった。そしてなにより、本山自身が厄介な持病を発症してしまう。プロになってからも彼を悩ませ続けた、椎間板ヘルニアである。
 
「試合に出るメンバーは3年生が少なくて、どちらかというと1、2年生が主体。でも飛び抜けて守備面で頼り切ってた古賀さんが代表で忙しくて、なかなかチームとしてまとまっていけなかったんですよね。インターハイは予選で負けて、全日本ユースは準優勝したんだけど、決勝で鹿実(鹿児島実)にボロ負け(1-5)。そして僕は国体で腰を傷めてしまった。選手権も県で負けてしまって、なにも残せないまま終わった1年でしたね」
 
 新チームが発足してからも、本山は部分合流しか果たせないでいた。ようやく新人戦の途中から出場できるようになったが、高校サッカーでよくある1日・3試合などのハードメニューはもはやこなせず、春のフェスティバルでも1日・1試合の限定起用が続いた。
 
「当時はまだ内視鏡手術とか技術が進歩してなかったんで、ヘルニアを治すには開腹手術しかなかった。それは嫌だったんで、だましだましのまま1年を過ごしました」
 
 栄光に彩られる3冠ストーリーにあって、本山は笑顔の陰で深刻な持病と戦っていたのだ。
 
【関連記事】
【黄金世代】第5回・本山雅志「その疾きこと、赤い彗星のごとし」(♯1)
【黄金世代】第5回・本山雅志「ワールドユース、ナイジェリアの風を切り裂く」(♯3)
【黄金世代】第1回・小野伸二「なぜ私たちはこのファンタジスタに魅了されるのか」(♯1)
【黄金世代】第3回・小笠原満男「誕生、東北のファンタジスタ」(#1)
【黄金世代】第2回・遠藤保仁「それは、桜島からはじまった」(♯1)
【黄金世代】第4回・稲本潤一「浪速の風雲児、ここにあり!」(#1)
【黄金世代・復刻版】1999 U-20日本代表メモリアル「最強の名のもとに」前編

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ