10月21日のＪ２リーグ第38節、名古屋グランパスとの大一番は１－１の壮絶ドローに終わった。
 
　この日の本拠地・トランスコスモススタジアム長崎は１万2923人の観客を集め、歴代２位の動員を記録。髙田社長は「まさかと思うほどの観客数ですよ。みんながオレンジのシャツを着て、一色に染まった時の歓喜。まさしくスポーツが生み出している感動なんだなと実感しましたし、スポーツはひとを幸せにできるんだと再確認しました」と、感慨に浸る。
 
　時間が許す限り、アウェーゲームにも足を運んでいる。驚かされるのが、そこでの髙田社長の立ち居振る舞いだ。なんとアウェーサポーターの元に足を運び、ああでもないこうでもないとサッカー談義をするのが好きだという。そんなＪクラブ社長は聞いたことがない。
 
「あんまり私が目立っちゃいけないんですけど、相手方のサポーターのみなさんともお話しさせてもらうんですよ。アウェーに行っても100人くらいの方と握手したり話したりしています。楽しいんですよ、それが。このあいだも町田でサポーターの方に『今日はどっちを応援するんですか？』と訊いたら『町田です！』と。『そうですよねぇ。いい試合をしましょう！』とか、他愛のない会話ですよ。試合は試合。みなさんとお話しするなかで、ひととひとの繋がりというのをすごく感じています。それこそがサッカーの素晴らしさなのでしょうね。ヨーロッパの熱狂的なのもいいけど、本来サッカーがもたらすものがなんのなのかをよく考えてみたくなりました。スタジアムに行くことでもっと幸せになれる。醍醐味ってそういうところにあるだろうと。今後も取り組んでいきたいもののひとつです」
 
　九州のプロスポーツ界は、プロ野球日本一に返り咲いた福岡ソフトバンクホークスの天下だ。福岡だけでなく、例えば鹿児島や宮崎の人びとの支持も得ていて、ファンは九州全域に及ぶ。
 
「九州はすべてがソフトバンクを見ていますね。東北なら楽天、北海道は日ハムですね。でも、Ｊリーグのサッカークラブは全国に50もあるんですよ。しかも、ほぼ各都道府県にありますから、もっと盛り上がっていいと思います。いろいろ研究していきたいと思います」
 
＜後編につづく＞
 
取材・文：川原崇（サッカーダイジェストWeb編集部）
 
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PROFILE
たかた・あきら／通信販売会社『ジャパネットたかた』の創業者。独特の語り口調でお茶の間の人気者となり、同社を全国有数の大企業に成長させた。2015年１月に社長職を退任。そして今年４月、ジャパネットホールディングスが経営難に陥ったＶ・ファーレン長崎を子会社化したことを受け、クラブの代表取締役社長に就任した。1948年11月３日生まれ、長崎県平戸市出身。