必要なのはクラブとチームが一枚岩になった結束だが…。

新キャプテンを担うボヌッチなどニューフェイスはまだ完全に本領を発揮できておらず、小さくない批判を浴びる。しかし、まだチームが発展途上という事実は見過ごせない。写真:Alberto LINGRIA
サンプドリアに敗れた翌日以降、ミラネッロで起こった出来事も、それにネガティブな方向で拍車をかけるものだった。
ミラベッリSDとの激しい口論を経て(表向きは)「監督自身の決断によって」解任されたフィジカルコーチのマッラは、フィオレンティーナ時代からモンテッラが採用する、技術・戦術とフィジカルを統合した斬新なトレーニングメソッドを支えてきた片腕的存在だった。
そのトレーニングの内容、さらにやはりマッラ主導で導入された菜食主義的な考え方に基づく厳密な食事メニューなどに、一部の選手(主に新戦力)から不満が出ていたことは事実のようだ。
しかしミランの内部に太いパイプを持つ『ラ・レプブリカ』紙のエンリコ・クロー記者は、ミラベッリSDがモンテッラ監督のトレーニングメソッドを評価しておらず、2人の口論もそれを巡るものだったこと、そしてマッラの解任もその結果であったことを示唆する記事を書いている。
もしそれが事実だとしたら、SDの現場介入によって監督が自らのメソッドを変えざるを得なくなった、すなわち両者の関係にはすでに明らかな亀裂が入っているという話になる。クラブの上層部が監督を全面的に信頼、支持していないという事態が、構築途上のチームにどのような心理的影響を及ぼすかを考えると、ミランの現状と今後について楽観的になることは難しい。
今のミランに最も必要なのは、クラブとチームが一枚岩になった結束であり、プレッシャーや批判から守られた落ち着いた環境である。しかし当面のところ、そのどちらも手に入れることは簡単ではない。
国際Aマッチウィーク明けの10月16日に組まれている試合は、あろうことか宿敵インテルとのミラノ・ダービーである。そしてそこからの3週間はミッドウィークに組まれたELの2試合、セリエAの1試合を含め、中2日と中3日で7連戦というハードスケジュールが待っている。そのピークとなるのが10月28日のユベントス戦だ。
今シーズンのチームの成り立ちを考えれば、この7試合の結果に一喜一憂するよりも、試合を重ねる中でチームとしての完成度がどのように高まっていくかの方に焦点を当てるべきだろう。しかし現状を見る限り、外部(マスコミやサポーター)はもちろん内部(クラブ首脳)にも、それだけの余裕と落ち着きを求めるのは難しそうだ。
まずは、ダービーの内容、そして結果がこの状況にどのような変化をもたらすのかに注目しよう。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。ジョバンニ・ビオ氏との共著『元ACミラン専門コーチのセットプレー最先端理論』が2017年2月に刊行された。
ミラベッリSDとの激しい口論を経て(表向きは)「監督自身の決断によって」解任されたフィジカルコーチのマッラは、フィオレンティーナ時代からモンテッラが採用する、技術・戦術とフィジカルを統合した斬新なトレーニングメソッドを支えてきた片腕的存在だった。
そのトレーニングの内容、さらにやはりマッラ主導で導入された菜食主義的な考え方に基づく厳密な食事メニューなどに、一部の選手(主に新戦力)から不満が出ていたことは事実のようだ。
しかしミランの内部に太いパイプを持つ『ラ・レプブリカ』紙のエンリコ・クロー記者は、ミラベッリSDがモンテッラ監督のトレーニングメソッドを評価しておらず、2人の口論もそれを巡るものだったこと、そしてマッラの解任もその結果であったことを示唆する記事を書いている。
もしそれが事実だとしたら、SDの現場介入によって監督が自らのメソッドを変えざるを得なくなった、すなわち両者の関係にはすでに明らかな亀裂が入っているという話になる。クラブの上層部が監督を全面的に信頼、支持していないという事態が、構築途上のチームにどのような心理的影響を及ぼすかを考えると、ミランの現状と今後について楽観的になることは難しい。
今のミランに最も必要なのは、クラブとチームが一枚岩になった結束であり、プレッシャーや批判から守られた落ち着いた環境である。しかし当面のところ、そのどちらも手に入れることは簡単ではない。
国際Aマッチウィーク明けの10月16日に組まれている試合は、あろうことか宿敵インテルとのミラノ・ダービーである。そしてそこからの3週間はミッドウィークに組まれたELの2試合、セリエAの1試合を含め、中2日と中3日で7連戦というハードスケジュールが待っている。そのピークとなるのが10月28日のユベントス戦だ。
今シーズンのチームの成り立ちを考えれば、この7試合の結果に一喜一憂するよりも、試合を重ねる中でチームとしての完成度がどのように高まっていくかの方に焦点を当てるべきだろう。しかし現状を見る限り、外部(マスコミやサポーター)はもちろん内部(クラブ首脳)にも、それだけの余裕と落ち着きを求めるのは難しそうだ。
まずは、ダービーの内容、そして結果がこの状況にどのような変化をもたらすのかに注目しよう。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。ジョバンニ・ビオ氏との共著『元ACミラン専門コーチのセットプレー最先端理論』が2017年2月に刊行された。