古巣戦で実感した「12番目の選手が持つ力」。
「ベンチならメンバー外でいいです、って言っちゃって……」
柏木にとって幸運だったのは、叱ってくれる先輩が身近にいたことだ。食事に連れ出してくれたのは、普段から柏木をかわいがっていた平川忠亮である。
「ヒラさんが『あれは違うぞ』って厳しく指摘してくれて、確かにそうやなって。それで反省して、監督にも謝って、このサッカーの中で自分に何ができるか、真剣に考えるようになった」
1対1で抜くのが難しくても、守備で頑張ることはできる。
コンビネーションで崩す機会は少なくても、ミドルシュートは狙える。
練習でアピールに務めた柏木は7月13日の川崎フロンターレ戦で5試合ぶりにスタメンに戻ると、翌節のジュビロ磐田戦から公式戦3試合連続ゴールを決め、復活を印象づけた。
その活躍ぶりは日本代表監督のアルベルト・ザッケローニの目に留まり、ワールドカップ予選の開幕を控える日本代表に半年ぶりの復帰を果たすのだ。
改めて、柏木が振り返る。
「プロ1年目から試合に出ていたから、出られない人の気持ちを考えることがなかったけど、出られない人のためにも試合に出たら頑張らないといけない。練習でしっかりやるから試合に出られるっていう、当たり前のことに気づかせてもらった。悔しかったけど、そういう経験をさせてくれたゼリコさんには感謝しているし、ヒラさんや先輩たちがいたから、 乗り越えられたと思う」
―――◆―――◆―――
10月に監督が交代し、苦しんで、苦しみ抜いて残留を果たした11年シーズン、柏木にはもうひとつ忘れられないことがある。
12番目の選手が持つ力、である。
そもそも浦和にやって来た理由のひとつに、「あれだけ大勢のお客さんの前でプレーできたら幸せだろうな」という想いがあった。
だが、それが甘い考えだと気づくまでに、時間はかからなかった。
「外から来た選手は活躍しないと応援してもらえない。なかなか勝てへん時期やったから、厳しい言葉をぶつけられたりもして、正直、1年目は怖かった」
予期せぬことが起きたのは10年11月7日、古巣である広島との試合前だった。
アウェーのゴール裏から、自分の名前が入ったチャント(応援歌)が聞こえてきたのだ。広島時代にチャントのなかった柏木にとって、初めてのチャントだった。
「あれは、すごく嬉しかった。ああ、少しは認めてもらえたのかなって」
翌11年はさらに低迷したが、柏木が感じたのは、怖さなどではなかった。
「すごく心強かった。個人を罵るようなヤジはなくて、とにかくチームを鼓舞してくれた。ブーイングにも『下向いてんなよ』『行こうぜ、行こうぜ』っていう気持ちが感じられたし、1勝するごとに本当に喜んでくれて一体感があった」
説明のつかない福岡戦のゴールについて、柏木は「いろんな想いが乗っかった」と表現した。あのシュートには柏木だけでなく、サポーターの強い想いも乗っていたのかもしれない。
柏木にとって幸運だったのは、叱ってくれる先輩が身近にいたことだ。食事に連れ出してくれたのは、普段から柏木をかわいがっていた平川忠亮である。
「ヒラさんが『あれは違うぞ』って厳しく指摘してくれて、確かにそうやなって。それで反省して、監督にも謝って、このサッカーの中で自分に何ができるか、真剣に考えるようになった」
1対1で抜くのが難しくても、守備で頑張ることはできる。
コンビネーションで崩す機会は少なくても、ミドルシュートは狙える。
練習でアピールに務めた柏木は7月13日の川崎フロンターレ戦で5試合ぶりにスタメンに戻ると、翌節のジュビロ磐田戦から公式戦3試合連続ゴールを決め、復活を印象づけた。
その活躍ぶりは日本代表監督のアルベルト・ザッケローニの目に留まり、ワールドカップ予選の開幕を控える日本代表に半年ぶりの復帰を果たすのだ。
改めて、柏木が振り返る。
「プロ1年目から試合に出ていたから、出られない人の気持ちを考えることがなかったけど、出られない人のためにも試合に出たら頑張らないといけない。練習でしっかりやるから試合に出られるっていう、当たり前のことに気づかせてもらった。悔しかったけど、そういう経験をさせてくれたゼリコさんには感謝しているし、ヒラさんや先輩たちがいたから、 乗り越えられたと思う」
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10月に監督が交代し、苦しんで、苦しみ抜いて残留を果たした11年シーズン、柏木にはもうひとつ忘れられないことがある。
12番目の選手が持つ力、である。
そもそも浦和にやって来た理由のひとつに、「あれだけ大勢のお客さんの前でプレーできたら幸せだろうな」という想いがあった。
だが、それが甘い考えだと気づくまでに、時間はかからなかった。
「外から来た選手は活躍しないと応援してもらえない。なかなか勝てへん時期やったから、厳しい言葉をぶつけられたりもして、正直、1年目は怖かった」
予期せぬことが起きたのは10年11月7日、古巣である広島との試合前だった。
アウェーのゴール裏から、自分の名前が入ったチャント(応援歌)が聞こえてきたのだ。広島時代にチャントのなかった柏木にとって、初めてのチャントだった。
「あれは、すごく嬉しかった。ああ、少しは認めてもらえたのかなって」
翌11年はさらに低迷したが、柏木が感じたのは、怖さなどではなかった。
「すごく心強かった。個人を罵るようなヤジはなくて、とにかくチームを鼓舞してくれた。ブーイングにも『下向いてんなよ』『行こうぜ、行こうぜ』っていう気持ちが感じられたし、1勝するごとに本当に喜んでくれて一体感があった」
説明のつかない福岡戦のゴールについて、柏木は「いろんな想いが乗っかった」と表現した。あのシュートには柏木だけでなく、サポーターの強い想いも乗っていたのかもしれない。