【黄金世代】第4回・稲本潤一「16歳、U-17世界選手権の衝撃」(♯2)

カテゴリ:特集

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年08月24日

最初に合流した頃は、そんなにスゴいとは思ってなかった。

U-19アジアユースは決勝で韓国に敗れて準優勝。歓喜を爆発させるライバルの横で、稲本が憮然とした表情を見せる。(C)SOCCER DIGEST

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 黄金世代が本当の意味でスタートを切ったのは、97年の春。清雲栄純監督のもと、U-18日本代表が始動した。稲本は5月の茨城国際ユースで初合流。ボルシア・ドルトムントユースの精鋭を向こうに回しても怯むことなく、攻守両面に堂々たるプレーを見せつけた。高体連で活躍していた小野や高原、本山雅志らは、この“高校生Jリーガー”の変貌ぶりを目の当たりにし、少なからず焦燥に駆られるのだ。
 
 まず稲本にとって、黄金世代とはどんな位置づけなのか。
 
「あの世代の仲間と一緒にプレーできて、一緒にいろんな経験をできたのは最高の財産。でも最初に合流した頃は、そんなにスゴいとは思ってなかったんですよ。それこそヤナギ(柳沢敦)さんとか、シュン(中村俊輔)さんとか、ツネ(宮本恒靖)さんとか上の世代もタレントが揃ってたし、Jで戦ったりしてましたからね。ただ、僕らの世代の連中はみんなスゴい自信を持ってましたよ。誰にも負けないぞっていう気概はそうとうなものだった」
 

 やがて主力の誰もがプロとなり、98年にはワールドユースのアジア予選(アジアユース)を戦った。タレント軍団はどこかで、アジアは楽勝だとタカをくくっていた。
 
「とにかくやってて楽しかった。日本代表やねんけど、遊び感覚でやってる感じ。1次予選は相手も強くなかったし、大勝のゲームばっかりでしたけど、その割にはスゴい応援してもらった。僕らは注目されてるんやなと実感しましたね」
 
 そして秋、アジアユースの本大会。タイのチェンマイで、彼らは現実を突きつけられる。たしかに日本は図抜けたタレント力を誇っていたが、それがピッチ上では共鳴しなかった。屈辱的だったのは、グループリーグと決勝で2度対戦したライバル韓国に、連敗を喫したこと。気づけば自信過剰な、慣れ合い集団に成り下がっていた。
 
「あれは悔しかったし、忘れられないですね。同じ相手に大会で2回も負ける。しかもそれが韓国やった。チームとして甘さがあったと言われてもしょうがないし、実際に個々が好き勝手にやってるところがあった。監督の言うこともあまり聞かないで、自分たちでなんとかできると思ってたのかもしれません」
 

 そんな甘ちゃんたちの元に送り込まれたのが、鬼の指揮官、フィリップ・トルシエである。98年の年末、清雲監督が辞意を表明。すでにA代表とシドニー五輪代表の監督を兼務していたフランス人が、ワールドユースを4か月後に控えたU-20日本代表の監督に就任したのだ。
 
 アジアユースの決勝を視察した際、トルシエはこう話していた。
 
「これだけの才能が集まっているのだから、日本サッカーの未来は明るい。だが技能に優れているだけで勝利は掴めない。彼らには、いや日本人選手には、狡猾さが足りないんだ。韓国に劣っている部分があったとすれば、まさにそこだとわたしは思う」
 
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