【黄金世代・復刻版】遠藤保仁メモリアル ~ シドニー五輪秘話「進撃の裏側で」(後編)

カテゴリ:特集

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年06月05日

「こういう経験をしたヤツにしか成長できない部分がある」。

帰国後にすぐさまサンガの練習に参加すると、まず声をかけてくれたのがキングカズだったという。温かい言葉で迎えられた。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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 日本はPK戦で涙を呑み、遠藤の2週間に渡る闘争も、終わりを告げた。
 
「最初は長く感じたけど、大会が始まりだしたらあっという間だった。

 自分としては、サッカー人生で2度目の屈辱だと思ってる。1度目は、最終予選のカザフ戦(1999年11月6日)、途中で交代させられたとき。でも後になって思うと、レギュラーになって調子にノッてたなって思うし、同時に誰かにポジションを奪われるかもしれないって焦りもあった。結局、あれから五輪(代表)の試合にはひとつも出てませんからね。流れを戻せずに来ちゃったってことです。

 でも、今回の経験で、また初心に戻れたなって思う。勝ちつづけたら挫折を感じられないし、やっぱ負けってのを知らないとダメだから。僕はエリートでもないし苦労人でもない。ただ淡々とやってきて、練習なんかも『このへんでいいかな』って考えてるところがあった。そういうとこから徹底的に直さないといけないし、どんな形にせよ参加したオリンピックに、なにか意義を見いだすならそこになるはずだし。

 無駄にはしたくないですよ、この悔しさは。ある意味では刺激的でしたからね。こういう経験をしたヤツでしか成長できない部分がある。いまはそう感じてます」
 
 他の五輪代表メンバーが束の間のオフを消化するなか、遠藤は帰国の翌日からサンガの練習に加わっている。
 
 まず声をかけてきたのがキングカズだった。「ストレスが溜まってただろう?」と、温かい言葉で迎えられたという。久々の実戦形式を楽しみ、まるで自己の存在意義を確認するように、すべてのプレーに最大限のエネルギーを注ぎ込む。
 
 あるがままの自己を受け入れ、再浮上への一歩を踏み出した瞬間だ。
 
「あの青いユニフォームは、またいつの日か絶対、袖を通したい。バックアップのメンバーとも話してたんですよ。『オレらだけにしか味わえないものがあった。2年後、今度はオレたちが逆転してやろうな』って。変に団結しちゃってたかな(笑)」
 
 年代別の「世界」を、もう経験することはできない。これからは無制限にして最高峰の舞台、フル代表へのチャレンジとなる。
 
 アジアカップ出場でリードを奪っている選手はいるが、2002年までの2年という期間がいかに長く、アプローチと伸びの違いで陣容は容易く変わるのだという事実を、五輪代表の誰もがよく理解した。ここに至るまでの日々を思い起こせば、簡単に分かることだ。
 
 シドニー五輪に出場した23歳以下の日の丸戦士たちにとって、アデレードという地は、自らのサッカーキャリアにひとつの線引きをする場所となった。
 
 それはバックアップメンバーの4人にとっても、同様であったはずだ。

<了>

取材・文:川原崇(サッカーダイジェスト)
 
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