【黄金世代・復刻版】遠藤保仁メモリアル ~ シドニー五輪秘話「進撃の裏側で」(後編)

カテゴリ:特集

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年06月05日

いつしか、ゲームを観る側へと回っていた。

準々決勝、日本はPK戦でアメリカに敗北。下馬評でもタレント力でも優っていたが、突き放す力強さに欠けていた。(C)REUTERS/AFLO

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 では、どうすれば試合に出られるのか。

 簡単なことだ。怪我人が出れば、代替登録される。
 
 誰かが怪我をしないだろうか──。ともすれば、自己嫌悪の極致に至るかもしれない。バックアップメンバーたちもギリギリのところで、自問自答を続けていた。
 
「ブラジル戦でコウジ(中田浩二)が腰を傷めたとき? う~ん、あれは検査をしてからじゃないと分からない状況だったし、アメリカ戦に勝ってればもっと現実的に考えてたのかもしれないですけどねぇ。

 むしろスロバキア戦が終わったあとのほうがショックだった。ヒデさん(中田英寿)と森岡(隆三)さんが出場停止になって『よし、オレたちの出番だ!』って。さすがに欠員が出るんだからベンチには入れるだろうって盛り上がってた。盛り上がったぶん、ルール上無理なんだって聞かされたときの反動は大きかったですね。

 誰かが怪我をすればいいとか、そういうのは考えないようにしていました。もちろん試合に出たいし、僕らにはそういう状況にならない限りチャンスはないんだけど、やっぱ、みんなずっとやってきた仲間だから……」

 そして準々決勝、ヒンドマーシュ。日本の進撃はここで急停止する。
 
 アメリカなんて大したことない。日本が恐れるほどの相手でない。1年前のワールドユースで快勝を収めた遠藤にとって、それは明白だった。
 
 しかし、刻々と移りゆく戦況の中で際立ったのは、アメリカの選手たちの頭の良さであり、試合巧者ぶりだった。

 オーストラリア入りして4試合目。スタンドからの景色も見慣れてきた。ある意味で、自らをピッチ上の選手に置き換えることができなくなり、ゲームを観る側へと回っていた。
 
 開き直りでも余裕でもない。延長戦前に見せた笑みは、結果的にバックアップメンバーたちが緊張感を共有できなかったことの証明でもあった。
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