ちぐはぐだったインテルと最低のメルカートとなったミラン。
【負け組】インテル
6月に経営権を取得した新オーナー・蘇寧グループ(中国)は、補強に関する意見の相違を理由にロベルト・マンチーニ監督を辞任に追い込みながら、後任のフランク・デ・ブール監督が不甲斐ない戦いで開幕戦に完敗すると、途端に慌て出した。
メルカートの終盤には、移籍収支が大赤字になり、ファイナンシャルフェアプレー違反でUEFAからEL選手登録枠を減らされるのを知りながら、マンチーニが要望していたジョアン・マリオ(←スポルティング)とガブリエウ(←インテル)を獲得するなど、その補強動向は何ともちぐはぐだ。
アントニオ・カンドレーバ(←ラツィオ)、エベル・バネガ(←セビージャ)らの獲得で、個のクオリティーだけに注目すれば、ユベントスに次ぐ陣容になった(登録選手の市場価格総額でもリーグ2位)。
しかし、その個性をひとつの組織として機能するようにまとめ上げるチーム構想と戦術的文脈が欠落しているところは、オーナーが変わったくらいでは容易に変わらぬ伝統のインテルらしさである。ナポリ、ローマに対抗して3位争いに参入できれば上出来だろう。
【負け組】ミラン
昨年2月の「ミスターB」登場以来、足かけ2年にわたりずるずると続いた経営権売却問題は、今年に入って相手が中国資本に変わった末、8月半ばにやっと決着を見た。とはいえ、新オーナーが決まったにもかかわらず、期待された補強資金の投下はお預けのままだ。
予算捻出のためにカルロス・バッカを売りに出したにもかかわらず、高値が嫌われて買い手がつかずに結局残留。その結果、主力クラスどころか、レギュラークラスの新戦力すらCBのグスタボ・ゴメス(←ラヌース)ただ1人という何ともお寒いメルカートに終わった。
実質的な戦力値は昨シーズン7位に終わったチームと変わっておらず(登録選手の市場価格総額はリーグ5位)、クラブが掲げるCL出場権獲得という目標は、今シーズンも単なる大風呂敷に終わりそうだ。
だが、この「近年最低のメルカート」、見方によってはポジティブに受け取ることも不可能ではない。シルビオ・ベルルスコーニが空約束を繰り返してきた架空の夢物語に完全に見切りをつけ、地に足のついた中・長期的なチーム再建プロジェクトに腰を据えて取り組む契機にもなり得るからだ。
実際、第2節ナポリ戦(●2-4)で、ヴィンチェンツォ・モンテッラ監督がピッチに送ったイレブンは平均年齢24.8歳、過半数の6人がU-23以下(最年長は31歳のリッカルド・モントリーボ)というきわめて若いチームだった。
スソ、エムバイ・ニアング、アレッシオ・ロマニョーリ、ジャンルイジ・ドンナルンマなど、国際レベルに達しうるポテンシャルを備えたタレントを擁しているだけに、こちらも名将の資質十分なモンテッラの下で、目先の勝ち負けに振り回されずにチームを育てていけば、1、2年後にはかなり面白いことになっているかもしれない。
この「近年最低のメルカート」が、オセロゲームですべての駒を黒から白にひっくり返す一手のように、ミランを負け組から勝ち組へと一気に転じさせるスイッチになる可能性も十分にある。
文:片野 道郎
【著者プロフィール】
かたの・みちお/1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌や当サイトでも、ロッシ監督とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博す。
2016年夏に新天地を求めた主な選手を移籍写真で紹介!
6月に経営権を取得した新オーナー・蘇寧グループ(中国)は、補強に関する意見の相違を理由にロベルト・マンチーニ監督を辞任に追い込みながら、後任のフランク・デ・ブール監督が不甲斐ない戦いで開幕戦に完敗すると、途端に慌て出した。
メルカートの終盤には、移籍収支が大赤字になり、ファイナンシャルフェアプレー違反でUEFAからEL選手登録枠を減らされるのを知りながら、マンチーニが要望していたジョアン・マリオ(←スポルティング)とガブリエウ(←インテル)を獲得するなど、その補強動向は何ともちぐはぐだ。
アントニオ・カンドレーバ(←ラツィオ)、エベル・バネガ(←セビージャ)らの獲得で、個のクオリティーだけに注目すれば、ユベントスに次ぐ陣容になった(登録選手の市場価格総額でもリーグ2位)。
しかし、その個性をひとつの組織として機能するようにまとめ上げるチーム構想と戦術的文脈が欠落しているところは、オーナーが変わったくらいでは容易に変わらぬ伝統のインテルらしさである。ナポリ、ローマに対抗して3位争いに参入できれば上出来だろう。
【負け組】ミラン
昨年2月の「ミスターB」登場以来、足かけ2年にわたりずるずると続いた経営権売却問題は、今年に入って相手が中国資本に変わった末、8月半ばにやっと決着を見た。とはいえ、新オーナーが決まったにもかかわらず、期待された補強資金の投下はお預けのままだ。
予算捻出のためにカルロス・バッカを売りに出したにもかかわらず、高値が嫌われて買い手がつかずに結局残留。その結果、主力クラスどころか、レギュラークラスの新戦力すらCBのグスタボ・ゴメス(←ラヌース)ただ1人という何ともお寒いメルカートに終わった。
実質的な戦力値は昨シーズン7位に終わったチームと変わっておらず(登録選手の市場価格総額はリーグ5位)、クラブが掲げるCL出場権獲得という目標は、今シーズンも単なる大風呂敷に終わりそうだ。
だが、この「近年最低のメルカート」、見方によってはポジティブに受け取ることも不可能ではない。シルビオ・ベルルスコーニが空約束を繰り返してきた架空の夢物語に完全に見切りをつけ、地に足のついた中・長期的なチーム再建プロジェクトに腰を据えて取り組む契機にもなり得るからだ。
実際、第2節ナポリ戦(●2-4)で、ヴィンチェンツォ・モンテッラ監督がピッチに送ったイレブンは平均年齢24.8歳、過半数の6人がU-23以下(最年長は31歳のリッカルド・モントリーボ)というきわめて若いチームだった。
スソ、エムバイ・ニアング、アレッシオ・ロマニョーリ、ジャンルイジ・ドンナルンマなど、国際レベルに達しうるポテンシャルを備えたタレントを擁しているだけに、こちらも名将の資質十分なモンテッラの下で、目先の勝ち負けに振り回されずにチームを育てていけば、1、2年後にはかなり面白いことになっているかもしれない。
この「近年最低のメルカート」が、オセロゲームですべての駒を黒から白にひっくり返す一手のように、ミランを負け組から勝ち組へと一気に転じさせるスイッチになる可能性も十分にある。
文:片野 道郎
【著者プロフィール】
かたの・みちお/1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌や当サイトでも、ロッシ監督とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博す。
2016年夏に新天地を求めた主な選手を移籍写真で紹介!