現実を直視すれば、怪我をしている山口蛍も含めて、日本のボランチにそんなスーパーな選手はいない。一案としては、森重のボランチ起用も見てみたいとは思っている。アギーレ前日本代表監督時代にはアンカーを経験しているし、フィードも上手い。本職はCBだから、長谷部は守備の心配をせずに積極的に前に出て行けるはずだ。

　また、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦のように１-２で負けている状況で推進力が欲しい場合は、原口を使う手もあっただろう。このオプションはロシア・ワールドカップのアジア２次予選・シンガポール戦で試し済み。あの時は本人の困惑具合がはっきりと分かったけど、ハリルホジッチ監督といろいろと話し合えたみたいだから、今なら平気だと思う。
 
　特に終盤は相手の足が止まっていたし、１トップになっていたからCBが残っていれば対応できる状況だった。ならば、守備網の外でフリーでボールを受けて、原口の得意とするドリブルでドンドン仕掛けさせるのも案としては面白かった。それこそゴールに近い位置でファウルをもらえただろうし、相手が釣り出されればパスを出してお膳立てすればいい。
 
　大島僚太を投入しても面白いかなとも考えていた。相手の嫌がる場所にボールをつけられるし、川崎でかなり鍛えられているから、受け手が「今！」と考えるタイミングでパスを出せる。スペースに入り込むのが巧みな清武弘嗣はもちろん、最終盤でピッチに立った小林悠に絶妙なお膳立てが出来たのではないか。
 
　原口ほどの突破力はないにせよ、スペースがあればドリブルで持ち上がることもできるよね。以前は後ろでボールを捌くだけだったけど、最近の川崎でのプレーを見ていても前への意識はかなり高まっているように感じる。ペナルティエリアに侵入する回数も増加したし、隙あらばゴールも狙っている。
 
　原口にせよ、大島にせよ、攻撃で決定的な仕事ができるから、“押し込んでいる”という制限はつくが、ひとつのオプションとするのは十分にありだ。ただ、誰かをすぐに長谷部の相棒とするのには決定打がない。まさに「帯に短し襷に長し」のような状態だ。
 
　それぞれが特長を持った選手だけに、自身の強みと弱みを正確に把握して能力を伸ばし、切磋琢磨してその座を射止めてほしい。それが、日本代表が世界と伍するために必要なことだと、キリンカップを見ていて感じた。