【セリエA総括】「サプライズ」だらけの15-16シーズンを振り返る

カテゴリ:連載・コラム

片野道郎

2016年05月20日

もっとも期待を裏切ったビッグクラブは…。

サポーターの多くが続投を望んでいたにもかかわらずミハイロビッチ監督を解任したミラン。ここ2年半で5人目の指揮官となるブロッキの招聘は裏目に出た。(C)Getty Images

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 CL出場権(3位以内)を目標に掲げたビッグクラブの中で、もっとも大きな失望をもたらしたのは、間違いなくミランだろう。
 
 かねてからタイ資本との間でクラブの経営権売却交渉を進めていたオーナーのシルビオ・ベルルスコーニは、チームにCL出場権をもたらすことでクラブの資産価値を高め、自身のプライドも満足させて手放そうという思惑もあって、近年の緊縮路線から一転、カルロス・バッカとルイス・アドリアーノというFW2枚をはじめとする新戦力獲得に総額1億ユーロ(約140億円)近い資金を投下、昨シーズンにサンプドリアにEL出場権をもたらし、その指導力が高い評価を受けたシニシャ・ミハイロビッチ監督にチームを託した。
 
 ミハイロビッチは、ベルルスコーニが好むポゼッション志向の攻撃サッカーでは攻守のバランスが維持できないと見るや、ソリッドな4-4-2をベースにした効率的な堅守速攻スタイルに舵を切る。
 
 スペクタクルという言葉とはまったく無縁ながらも、後半戦に入ってからは結果も安定し、一時は二桁まで落ちた順位も2月末の時点では3位ローマに6ポイント差の6位まで盛り返した。
 
 しかし、上位戦線本格参入を賭けた3月6日のサッスオーロ戦(28節)に0-2で完敗を喫したのをきっかけに、続く4試合も2分2敗と停滞。痺れを切らせたベルルスコーニは「こんなにひどいサッカーをするミランを見たことがない」と言い放ってミハイロビッチの首を切り、後任監督にプリマベーラ(U-19)からクリスティアン・ブロッキを内部昇格させた。
 
 しかしこの衝動的な人事は明らかに裏目。ミランは3年ぶりのEL出場権を得られる6位の座すらサッスオーロに奪われ、5月21日に開催されるユベントスとのコッパ・イタリア決勝に欧州カップ出場最後のチャンスを賭けることになった。
 
 中堅・弱小クラブの中でもっとも賞賛すべき戦いを見せたのは、そのミランを蹴落として6位に入ったサッスオーロだろう。
 
 就任4年目のエウセビオ・ディ・フランチェスコ監督が毎年着実にチームの完成度を高め、セリエA昇格1年目(13-14)の17位、2年目となる昨シーズンの12位、そして今シーズンの6位と大きな成長と成功をもたらした。
 
 どんな相手に対しても自分たちの攻撃的なスタイルを貫く積極的な姿勢、それを結果に結びつける戦術的完成度の高さは特筆もの。当然トップ5入りを狙うであろう来シーズンは、台風の目になる可能性も十分だ。
 
文:片野道郎
 
【著者プロフィール】
片野道郎/1962年生まれ、仙台市出身。95年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させる。『ワールドサッカーダイジェスト』では、現役監督のロベルト・ロッシ氏とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博している。
 
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