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黄金のカルテットを追いかけた遠藤保仁――。極めて異質な「お先にどうぞ」の精神、導き出した最適解は欧州よりJだった

カテゴリ:日本代表

加部 究

2024年01月18日

「あの運動量なら、今のオレにだって出来るぞ」

マンU戦でルーニー(左)と対峙する遠藤(右)。屈指の名門相手に躍動し、ゴールも奪った。(C)SOCCER DIGEST

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 中田には強靭なフィジカルを基盤とする創造性、中村にはフィニッシュにかけての独創性、小野には誰もが感嘆するテクニック、稲本には一目瞭然のスケールというように、それぞれが判り易い武器を持っていた。

 それに対し、概ね3タッチ以内の短時間に凝縮される遠藤の特徴は、その効果が本場欧州で立証されていなかった。実際2006年のドイツW杯では「遠藤のプレーが大好きだ」と公言するジーコ監督も「順番を待つ必要がある」とフィールドプレイヤーでは唯一遠藤をピッチに送り出せていない。

 遠藤自身もピッチ上のプレーだけではなく、欧州進出についても急ぐ様子がなかった。黄金のカルテットは、急ピッチな右肩上がりで世界を追いかける日本サッカーの象徴で、だからこそ早くから意欲的に欧州での成功を掴み取ろうとした。しかし遠藤は、その時々で自分が最も輝き、プレーを満喫できる場所がどこなのかを慎重に見定め、その度に導き出した最適解は欧州よりJだった。

 確かにカルテットより経験の幅が狭い遠藤には課題もあった。ガンバ大阪に移籍して間もない頃に、かつて欧州制覇を経験し現役を退いていた名手が来日してJリーグを観戦した。既に彼は40歳代に迫ろうとしていた。

「あれが遠藤か?あの運動量なら、今のオレにだって出来るぞ」
 
 多分それをもう少し肯定的に鼓舞したのが、日本代表で遠藤を重用することになるイビチャ・オシムだった。こうして現代サッカーに不可欠なハードワークと守備への献身性を身につけた遠藤の希少価値は高まり、G大阪はもちろん、日本代表でも中核の位置を確保していく。攻撃の加速がテーマとなる現代サッカーで、遠藤の高精度で効率的なタッチは見事に光彩を放っていくのだ。

 2008年のクラブW杯準決勝で対戦したマンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソン監督は、G大阪との5-3の打ち合いを制した試合後の会見で語った。

「遠藤がトップ下ではなくボランチだったので少々驚いた。もちろん彼なら世界中どこへ行ってもプレーできるよ」

 それから4年後に、同じ日本人の香川真司を口説きに行く経緯を考えても、完全なリップサービスというわけでもなかったはずだ。
 
 ジーコ監督が選んだ黄金のカルテットは欧州での刺激を得て成長を加速させ、21世紀初頭の日本サッカー界を牽引した。だが遠藤は遠藤らしくマイペースで熟成し、逆にだからこそ長く最盛期を継続できたのかもしれない。遠藤は国内に留まったからこそ、バラエティ番組等を含めて魔法のテクニックを惜しげもなくファンに披露し続けた。

 時代背景の変化を考えても、今後同じレベルで国内に留まる選手が現われるとは思えない。きっと遠藤は、永遠に「史上最高のJリーガー」として語り継がれるはずである。(文中敬称略)

取材・文●加部究(スポーツライター)

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