「先制点を決めたあと、ボールを回す意識が強くなりすぎた。もう少し、前へ積極的に狙っていけたのではないか。そこは反省点に挙げられる。

　また、サイドでボールを受ける機会が多くなったため、中央にいるズラタンとの距離が開きすぎてしまうことがあった。どこで（自分が）攻めて、どこでズラタンを活かすのか、そのあたりも今後の課題になる」

　欲しかった勝点3を手中に収めながらも課題を抽出できたことは、それも含めて収穫と言えるだろう。

　今年で5年目のキャプテンを務める阿部勇樹は言った。

「点を獲ってほしいと思うふたり（武藤と興梠）が決めてくれたからね。武藤はプレッシャーもあったはずだけど、これで気持ち的に楽になるんじゃないかな。でも、もっとプレッシャーを掛けていかないといけないかもね（笑）」

　そして試合後の記者会見には、主催者が選ぶマンオブザマッチに選ばれた武藤とペトロヴィッチ監督が揃って登壇した。その席で武藤がアーノルド監督とのエピソードを語ると、隣にいたペトロヴィッチ監督が冗談めかして、“引き抜き”を警戒した。

「（武藤が）シドニーに行かなければ、いいですけれどね（笑）」

　とはいえ、武藤が浦和のエースナンバーをつけて、ACLの舞台でアーノルド監督のチームから得点を奪う――。仙台時代に一緒だったふたりが、2年後に、そのような形で顔を合わせるとは思ってもみなかっただろう。
　
　昨季はチーム最多13ゴールを奪う、衝撃のブレイクを果たした。そして浦和にとって特別である「9」番をつけた2年目、チームのファーストゴールを元指揮官の前で決めた。

　さっそくドラマチックにシーズンが始まった。

　武藤を巡るシンデレラストーリーは、まだ続いている。2016年、その1ページ先に……どんな展開が待っているのか、楽しみだ。