セビージャに入団して２年目の2014－15シーズンは開幕当初こそ精彩を欠いたものの、尻上がりに調子を上げ、リーガ・エスパニョーラでは最終的に１年目の14得点を大きく上回る20ゴールを記録。舞台をヨーロッパリーグに移してもパフォーマンスは下がらず、２シーズン連続で７得点を叩き出し、チームの大会連覇に大きく貢献した。
 
　こうした活躍を受け、シーズン終了時には移籍市場の主役候補のひとりとなる。実際、中東や中国の金満クラブに加え、イングランドやスペイン、イタリアの名だたる有力クラブからオファーが舞い込んだ。そして、名門復活の切り札として、大いなる期待とともにミランに迎えられたのだった。
 
　控えめで大人しい性格のバッカは、ピッチを離れてまでスポットライトを浴びるのが苦手で、情熱の街セビージャではやや異質な存在に映っていた。それでも、常に高いプロ意識で練習や試合に臨み、黙々とミッションを遂行していくその職人魂は、周囲から一目も二目も置かれていた。
 
　渡欧後はまさにトントン拍子でステップアップを続けるバッカだが、その根底にあるのは、苦労の連続だった母国時代に培ったハングリー精神であり、そうした苦しい環境から這い上がることで掴んだ自信だろう。
 
「勇気のある人間とは、どんなことがあっても決して落ち込んだりせず、挫折するたびに強くなれる人間のことだ。僕はこれからも、どんなことがあっても前に突き進むだけだ」
 
　そう語るバッカは、新天地ミランでも強い決意を携えて前進を続け、シーズンの折り返し地点を迎えた今やエースの座をガッチリと掴み取っている。これからも、そのハングリー精神と自信を武器にゴールネットを揺らし続けることだろう。
 
文：下村正幸
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2015.10.01号より加筆・修正
 
【カルロス・バッカのPROFILE】
●フルネーム／カルロス・アルトゥーロ・バッカ・アウマダ
●生年月日／1986年９月８日
●身長・体重／181cm・77kg
●クラブキャリア（成績は国内リーグ）
2006 バランキージャ（COL２部）：27試合・12得点
07－08 ミネルベン（VEN２部）＊：29試合・12得点
2008 バランキージャ（COL２部）：19試合・14得点
2009 アトレティコ・フニオール（COL）：29試合・12得点
2010 アトレティコ・フニオール：32試合・18得点
2011 アトレティコ・フニオール：36試合・20得点
11－12 クラブ・ブルージュ（BEL）：10試合・３得点
12－13 クラブ・ブルージュ：35試合・25得点
13－14 セビージャ（SPA）：35試合・14得点
14－15 セビージャ：37試合・20得点
15－16 ミラン（ITA）：21試合・10得点
●コロンビア代表歴／25試合・８得点
●コロンビア代表デビュー／2010年８月11日（ボリビア戦）
※記録は2016年１月25日現在　＊＝レンタル