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弱肉強食の世界で逞しく生き延びる。だがU-23アジア杯では不甲斐ない出来に悔しさを滲ませ…【パリの灯は見えたか|vol.2 斉藤光毅】

カテゴリ:海外日本人

松尾祐希

2023年04月21日

ウズベクからオランダに直行

パリ五輪を目ざす大岩Jで、UAE遠征などでは10番を託されるなど周囲の期待は高い。写真:松尾祐希

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 もちろん、本番に向けて状態を上げるためのトレーニングは行なっていた。大会中、斉藤も「初めてのことなので、何が正しいか色々と試しながらやっている状態。そのなかで現段階では自分なりの一番良い状態に持っていけている」と話していた。

 ただ、4-3-3や4-2-3-1の左サイドで得意のドリブルで打開する場面は数えるほど。UAEとの初戦(2-1)はハーフタイム、サウジアラビアとの2戦目(0-0)は61分まで出場するなど、大岩監督は試合の中でコンディションを上げていく狙いを持っていたが、なかなか状態は上がってこなかった。

 チームは3位で終わったものの、全6試合で斉藤は無得点。期待された働きはできたとは言えず、「今、考えれば、全然上がっていなかったな……」。不甲斐ない出来に悔しさを滲ませるしかなかった。

 それでも、代表での悔しさをいつまでも引きずるわけにはいかない。すぐに新たなシーズンが始まる。しかし、休む間はほとんどない。2022-23シーズンは、年末にワールドカップが行なわれる影響で、開幕が例年よりも早かったからだ。そうした状況下で斉藤はオランダリーグ1部のスパルタ・ロッテルダムに新天地を求めた。

 新たなチャレンジに胸がたかぶらないわけがない。だが、またしても難しい状況が待っていた。ウズベキスタンで大会を終え、本来は一度、日本に戻って渡蘭する予定だったのだが、コンディションの問題で直接向かうことを余儀なくされたのだ。

 ウズベキスタンから直行したため、代表でのリュックしかなく、財布も日本で使っていたものしかない。偶然、海外でいつも使用しているクレジットカードが1枚入っていたため、事なきを得たが、新居も決まらない状態でシーズンインを迎えたのだ。
 
 当時の出来事を振り返り、苦笑いを浮かべながら紡いだ言葉からは、慌ただしさがうかがえる。しかし、それ以上にアクシデントに戸惑う暇がないほど、新たな環境に食らいつくのに必死だった。

「代表遠征自体が辛かったので、オランダに来て辛いと感じなかった。辛いと思うより、余裕がなかったという感じ。もう頑張るしかないなと(笑)。がむしゃらにやるしかない」

 オランダ1部での戦いは、ベルギー2部とはまた異なる。サッカーの質も変わり、求められるプレーもまるで変わった。そして、何より一から仲間の信頼を勝ち取るしかなく、そうした環境の変化に慣れる時間を考えれば、そんなアクシデントは微々たるものに過ぎなかった。

 新たな地で何を掴むのか。ベルギーで培った“引き出し”が活かされるのか。本当の意味で海外挑戦がスタートしたとも言える斉藤は、一からポジション争いに身を投じていくが、またしても簡単に事は運ばなかった。

※後編に続く。次回は4月22日に公開予定です。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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