「インドネシアサッカーを壊してくてありがとう」
それにしても、腑に落ちないのがFIFAのインドネシアへの対応だ。彼らは開催地を受け入れる際、どんなチームも受け入れるとサインをしたはずなのに、イスラエルが組み合わせ抽選会にやって来るのを拒否した。試合で対戦することも嫌がり、パレスチナ問題を理由に、イスラエルの出場停止を求めた。これは明らかな契約違反だ。彼らはロシアが出場停止なら、イスラエルも同じではないかと騒ぐが、そもそもFIFAはイスラエルにペナルティを与えたりはしていない。
多くの人はFIFAがインドネシアを罰するために開催権を取り上げたと思っているようだが、それは大きな間違いだ。テロなどの可能性があり、開催地と参加チームの安全が守れないから、インドネシア開催を止めたというのがFIFAの言い分。つまりインドネシアはとんでもない人種差別をしたにもかかわらず、FIFAの嫌う政治をサッカーに持ち込んだにもかかわらず、お咎めなしなのだ。
国際大会に出禁されることもない。それどころか一説ではペルーが返上したU-17W杯を、代わりにインドネシアに与えようという案さえ浮上しているという。U-17大会にイスラエルは参加しないからだ。全く納得できない話だ。
多くの人はFIFAがインドネシアを罰するために開催権を取り上げたと思っているようだが、それは大きな間違いだ。テロなどの可能性があり、開催地と参加チームの安全が守れないから、インドネシア開催を止めたというのがFIFAの言い分。つまりインドネシアはとんでもない人種差別をしたにもかかわらず、FIFAの嫌う政治をサッカーに持ち込んだにもかかわらず、お咎めなしなのだ。
国際大会に出禁されることもない。それどころか一説ではペルーが返上したU-17W杯を、代わりにインドネシアに与えようという案さえ浮上しているという。U-17大会にイスラエルは参加しないからだ。全く納得できない話だ。
気の毒なのはインドネシアのサポーター、そして選手たちだ。この大会にインドネシアが出れば、すべてのカテゴリーにおいて初のW杯出場だった。ご存じのようにインドネシアはサッカーに非常に熱い国で、この大会を本当に楽しみにしていた。
数か月前から街にはU-20W杯のロゴが描かれた旗が飾られ、大会マスコットも大会テーマソングも決まっていた。彼らの失望と怒りは大きい。ただインドネシアメディアではっきりと政府に抗議するようなことは書いたりはしていない。それらを見せたのは選手や市井の人々だ。
サポーターは葬式に使う看板を作って町に並べ選手たちに弔意を示し、「インドネシアサッカーを壊してくてありがとう」の横断幕を作った。
またU-20インドネシア代表のラッバーニ・タスニンは、自身のインスタグラムにこう書き込んでいた。
「俺たちの夢を壊して満足か? 今まで必死で練習してきたものは、政治的理由というやつで一気に消し飛んでしまった」
またチームのキャプテン、ホッキー・カラカも「あんたたちには輝かしい未来があるんだろうが、俺たちには? 俺たちは自分たちのキャリアをより良いものにしたかった。だけど、そのための踏み台はあんたたちに壊されてしまった」と憤慨している。
ただイスラエル参加を反対していたジャワ州の知事は、後日このカラカを役所に招待し、ジャワ州政府職員のポストを彼にオファーし、将来は心配ないと懐柔に成功したようだ。
U-20W杯がどうなるかは、まもなく決まるだろう(決まらなかったら大ごとだ)。だが開催地を変えても、日程を変えても変えなくても今回の大会は歴史的なスキャンダルだ。
取材・文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子
【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/ブラジル・サンパウロ出身のフリージャーナリスト。8か国語を操り、世界のサッカーの生の現場を取材して回る。FIFAの役員も長らく勤め、ジーコ、ドゥンガ、カフーなど元選手の知己も多い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授としても大学で教鞭をとる。
数か月前から街にはU-20W杯のロゴが描かれた旗が飾られ、大会マスコットも大会テーマソングも決まっていた。彼らの失望と怒りは大きい。ただインドネシアメディアではっきりと政府に抗議するようなことは書いたりはしていない。それらを見せたのは選手や市井の人々だ。
サポーターは葬式に使う看板を作って町に並べ選手たちに弔意を示し、「インドネシアサッカーを壊してくてありがとう」の横断幕を作った。
またU-20インドネシア代表のラッバーニ・タスニンは、自身のインスタグラムにこう書き込んでいた。
「俺たちの夢を壊して満足か? 今まで必死で練習してきたものは、政治的理由というやつで一気に消し飛んでしまった」
またチームのキャプテン、ホッキー・カラカも「あんたたちには輝かしい未来があるんだろうが、俺たちには? 俺たちは自分たちのキャリアをより良いものにしたかった。だけど、そのための踏み台はあんたたちに壊されてしまった」と憤慨している。
ただイスラエル参加を反対していたジャワ州の知事は、後日このカラカを役所に招待し、ジャワ州政府職員のポストを彼にオファーし、将来は心配ないと懐柔に成功したようだ。
U-20W杯がどうなるかは、まもなく決まるだろう(決まらなかったら大ごとだ)。だが開催地を変えても、日程を変えても変えなくても今回の大会は歴史的なスキャンダルだ。
取材・文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子
【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/ブラジル・サンパウロ出身のフリージャーナリスト。8か国語を操り、世界のサッカーの生の現場を取材して回る。FIFAの役員も長らく勤め、ジーコ、ドゥンガ、カフーなど元選手の知己も多い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授としても大学で教鞭をとる。