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【11月シリーズ現地記者座談:戦術編】攻守で工夫が足りなかったのはシンガポール戦の反省材料。一方、ハリルホジッチにとってはまだ“らしさ”を出す段階ではない

カテゴリ:日本代表

サッカーダイジェスト編集部

2015年11月15日

「ハリルホジッチは本来、プラグマティックな監督」(河治)

現体制下では全試合に出場している宇佐美。「伸びしろを確信した選手を育てようとするのも、ハリルホジッチの特徴」(河治)だ。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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――土台作りの段階で、親善試合を含めて12試合を戦いましたが、ハリルホジッチ監督の目指すサッカーは見えつつあるのでしょうか? 
 
宇都宮「まず、宇佐美が好きなんだな、と。宇佐美だけが、ハリルホジッチ体制で東アジアカップを含む全試合に出場しています。“宇佐美好き”は、監督が理想とするチームのキーワードになっているはずです」
 
河治「アルジェリア代表の時から、そんな傾向は見られました。ベスト16進出に貢献したフェグリも最初は荒削りだけど、個の力に光るものがある、そんな選手でしたし。まだ粗削りな選手を入れて、彼らを鍛えていくのが意外と好きなんです。
 
 チームの完成度を手っ取り早く上げるには、日本で言えば湘南の永木や鳥栖の藤田のような選手でベースを固める方が効率的。でも、宇佐美のようなセンス抜群の選手が指揮官の目に留まった。伸びしろを確信した選手を育てようとするのも、ハリルホジッチの特徴です」
 
――アギーレ体制下では、宇佐美は一度も代表に呼ばれていません。
 
河治「あのままチームを率いていればおそらく、どこかで呼ぶつもりだったと思います。アギーレはどちらかというと、個性派を後からチームに組み込む。南アフリカ大会の岡田監督と似ています。でもハリルホジッチは早めに“異分子”を取り込み、自分の手元で育てたいタイプです。そこはふたりのキャラクターの違いを如実に物語っています」
 
宇都宮「一方のチーム戦術に関しては、いわゆる“縦に速いサッカー”だと言われますが、あれはちょっとメディアが強調し過ぎた感もありますね。だから、監督に対する一般的なイメージがその方向で固まってしまった。ハリルホジッチにとって、“縦の速さ”はワンオブゼム。ひとつの戦術に過ぎません」
 
河治「ザッケローニ時代に足りていなかったことへの対策が、“縦の速さ”だったわけです。ブラジル・ワールドカップでの日本の戦いを見て、裏への意識が足りなさ過ぎる、と。“デュエル”にしてもそうです。まずは不足しているところを正そうとしただけなんです。
 
 ハリルホジッチは本来、プラグマティック(実利的、実際的)な監督です。いろんな引き出しを用意して、ベストな選択をし、相手に“嫌がらせ”をする。だから、圧倒的に実力差がある相手よりむしろ、自分たちより少し力が勝る敵に対しての戦いを得意とします。アルジェリア代表でのドイツ戦が最たる例ですね」
 
――まずは弱点を洗い出して、引き出しを作っている最中だということですね。
 
河治「そうです。逆に言えば、ハリルホジッチの特徴は、本人は今のところ出そうと思っていないのかもしれませんね。

 ただ、もうひとつザッケローニと決定的に違うのは、攻守に渡り、ボールサイドに人数をかけること。ザックは自身が『バランスを重視する』と言っていたように、攻撃で同時に人数をかけるのは、5人まででした。それでもイタリア人監督のなかでは多いほうなんですが。ところが、ハリルホジッチはそこに制限がない。だからこそ球際での戦いを強調して攻撃に迫力が出そうとするし、カウンターを受ける前に潰して守備のリスクを軽減しようとしています」
 
宇都宮「個の力、1対1は強調していますね。今までの日本代表は、そこが曖昧になっていた。『ポゼッションしていれば大丈夫だろう』みたいな風潮がありました。局面の厳しさを追求したのは、彼の特徴だと思います」
 
河治「結論を言えば、ハリルホジッチは相手によって最後のディテールを変える監督です。だからこそ今は、ある意味でありきたりなコアの部分を徹底して鍛えています」
 
宇都宮「今のチームは、“自分たちらしさ”を取っ払ったところからスタートしています。ブラジル・ワールドカップで通用しなかった点を反省し、チーム作りを進めている段階です。今はまだアジア2次予選ですからね。
 
 ちょっと話がズレますが、最近のメディアの論調として、ハリルホジッチを必要以上に貶めようとしている傾向を感じています。なぜかラグビーのワールドカップと比べたりとか。正当な批判になっていない」
 
河治「ナンセンスですよね。例えばラグビーの件にしても、エディ監督が就任してからの3年間は山あり谷ありだったわけです。チーム作りの過程では、ラグビーファンやメディアからの批判もありました。それを見ていないで、本大会のパフォーマンスやチーム作りだけを見た人が、好き勝手言っている」
 
宇都宮「最後にもうひとつ。10月にシリアに勝って2次予選を少し楽に戦える状況になったため、指揮官の色は出始めています。今回は“リベンジ”というプレッシャーのかかる状況でも、メンバーをいじって勝ち切った。これまで保守的な傾向は少なからずありましたが、指揮官が本来の姿に戻りつつある。その意味でも、今回の勝利はターニングポイントになると言えそうです」
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