「あの程度のチャレンジならば、ノーファウルということですよねという」衝撃の一言
――2007年前後のJリーグの空気を、たとえば岩政大樹(現・鹿島監督)さんは「全体で言うと審判と選手の関係があまりよくない時代」と語っていました。飯田さんは、そのタイミングでJリーグ担当審判員になり、今もトップレフェリーとしてピッチにいます。
「正直、当時は全体を見る余裕はなく、必死にやっているだけだったので、空気感は分かりません。私は2007年の後半戦あたりからJ2担当主審になったのですが、当時のJ2には経験豊富な選手が多く、邪魔しないようにガムシャラでした。
ただ、選手の皆さんからは『昔は口聞いてくれない審判多かったよ』と言われることが多々ありますし、Jリーグ開幕当初の指導としては『選手とはニヤニヤと会話をせず、ダメなものはダメで一線引いて、カードでコントロールしよう』というのはあったと聞きます。90年代前半の指導を受けてきた審判員が、2000年代のアセッサーになるので、違った意味での『強さ』が継承された部分はあるのかもしれません。それが良かった悪かったではなくて、2000年代の時代とマッチしていなかった。また、全員がそうだった訳ではなくて、悪い印象の方が強く残ったのもあると思います。ただ、今ほど関係性は良くなかったような印象はありますね」
「正直、当時は全体を見る余裕はなく、必死にやっているだけだったので、空気感は分かりません。私は2007年の後半戦あたりからJ2担当主審になったのですが、当時のJ2には経験豊富な選手が多く、邪魔しないようにガムシャラでした。
ただ、選手の皆さんからは『昔は口聞いてくれない審判多かったよ』と言われることが多々ありますし、Jリーグ開幕当初の指導としては『選手とはニヤニヤと会話をせず、ダメなものはダメで一線引いて、カードでコントロールしよう』というのはあったと聞きます。90年代前半の指導を受けてきた審判員が、2000年代のアセッサーになるので、違った意味での『強さ』が継承された部分はあるのかもしれません。それが良かった悪かったではなくて、2000年代の時代とマッチしていなかった。また、全員がそうだった訳ではなくて、悪い印象の方が強く残ったのもあると思います。ただ、今ほど関係性は良くなかったような印象はありますね」
――逆に飯田さんが、選手とのコミュニケーションで勉強になったことはありますか?
「我々、PRと日本プロサッカー選手会の皆さんで話をする機会があったりするのですが、5年くらい前の会でしょうか。その際に山田(大記:現ジュビロ磐田)さんがドイツ・ブンデスリーガからJリーグに戻ってきた時でした。確か『僕たち選手は相手の激しいコンタクトで怪我することより、自らの動きで怪我することの方が多い。たとえば、倒れるようなチャージでも、視界を確保できていれば、そんなに気にしていません』というようなことをおっしゃられていたのですが、本当に雷が落ちてきたくらいの衝撃を受けました。
私は最初に申し上げたように、選手としてトップの経験がありません。単にチャレンジをフォーカスしてジャッジするのではなくて、もっと大きな目で事象をジャッジしなければいけないと気づかされました。たとえば、タフにプレーしたいから、笛をもうワンテンポ待って、アドバンテージを見て欲しい選手もいるでしょう。それがプロフェッショナルの選手を担当するプロフェッショナルなレフェリーなのだと。
他にも私がJ1リーグ担当主審になったばかりの試合で、ノーファウルの判定をした後に、宮本恒靖(元日本代表)さんがコミュニケーションをとりにこられた時も印象的です。『なんでノーファウルなんだよ!』ではなく、『あの程度のチャレンジならば、ノーファウルということですよね』と異議というよりも確認することをおっしゃられて。これは当時、凄く衝撃を受けて、即座に返答出来ませんでした。中村憲剛(元日本代表)さんも、そういった“大人の駆け引き”が上手な選手でした。
外国籍選手とのコミュニケーションでは、意識していることがあります。それは先輩から『助っ人ストライカーとしてきた彼らは結果を出さないといけないプレッシャーと、言葉が通じない孤独さもある。だから、我々審判員は言葉が通じる日本人ディフェンスとばかり笑顔で話をしていると、「なんで俺だけファウルを…」というメンタルになる可能性がある』と教えて貰ってから、可能な限り、コミュニケーションをとるようにしています」
――ナイスゴールに「ゴラッソ」と声掛けしたりですね。
「そうですね。選手の皆さんとは、可能な限り、コミュニケーションをとっていければと思っています。ただ、審判員とのコミュニケーションを望まない方もいますので、自分本位にはならないように注意しています」
>>>後編に続く
「我々、PRと日本プロサッカー選手会の皆さんで話をする機会があったりするのですが、5年くらい前の会でしょうか。その際に山田(大記:現ジュビロ磐田)さんがドイツ・ブンデスリーガからJリーグに戻ってきた時でした。確か『僕たち選手は相手の激しいコンタクトで怪我することより、自らの動きで怪我することの方が多い。たとえば、倒れるようなチャージでも、視界を確保できていれば、そんなに気にしていません』というようなことをおっしゃられていたのですが、本当に雷が落ちてきたくらいの衝撃を受けました。
私は最初に申し上げたように、選手としてトップの経験がありません。単にチャレンジをフォーカスしてジャッジするのではなくて、もっと大きな目で事象をジャッジしなければいけないと気づかされました。たとえば、タフにプレーしたいから、笛をもうワンテンポ待って、アドバンテージを見て欲しい選手もいるでしょう。それがプロフェッショナルの選手を担当するプロフェッショナルなレフェリーなのだと。
他にも私がJ1リーグ担当主審になったばかりの試合で、ノーファウルの判定をした後に、宮本恒靖(元日本代表)さんがコミュニケーションをとりにこられた時も印象的です。『なんでノーファウルなんだよ!』ではなく、『あの程度のチャレンジならば、ノーファウルということですよね』と異議というよりも確認することをおっしゃられて。これは当時、凄く衝撃を受けて、即座に返答出来ませんでした。中村憲剛(元日本代表)さんも、そういった“大人の駆け引き”が上手な選手でした。
外国籍選手とのコミュニケーションでは、意識していることがあります。それは先輩から『助っ人ストライカーとしてきた彼らは結果を出さないといけないプレッシャーと、言葉が通じない孤独さもある。だから、我々審判員は言葉が通じる日本人ディフェンスとばかり笑顔で話をしていると、「なんで俺だけファウルを…」というメンタルになる可能性がある』と教えて貰ってから、可能な限り、コミュニケーションをとるようにしています」
――ナイスゴールに「ゴラッソ」と声掛けしたりですね。
「そうですね。選手の皆さんとは、可能な限り、コミュニケーションをとっていければと思っています。ただ、審判員とのコミュニケーションを望まない方もいますので、自分本位にはならないように注意しています」
>>>後編に続く