今季の取材を通して、筆者が最も印象に残っているのは、リバプール戦後の一コマだ。アーセナルが激戦の末に３−２で勝利すると、冨安はガブリエル、サリバらのディフェンダーと熱く抱擁を交わしていった。仲間たちと心から勝利を喜んでいるのが、記者席にいるこちらにも伝わってきた。

　振り返れば、昨シーズンのアーセナルはリバプールに一度も勝てなかった。国内リーグではホーム（０−２）＆アウェー（０−４）で連敗。準決勝で相まみえたリーグカップでも、第１戦は０−０、第２戦は０−２で敗れ、文字通り歯が立たなかった。

　昨シーズンはひとつのゴールも奪えなかったチームがゆっくりと成長曲線を描き、ようやく強豪リバプールを下した──。そんな思いに駆られていたのか、試合後はチーム全体、そしてエミレーツ・スタジアム全体が歓喜の渦に包まれていた。

　10月上旬、冨安は「チームの雰囲気はすごく良い。僕らはリーグ首位につけているし、自信もあります」と力強く語っていた。自身のコンディションについても「まだまだ上げていけるなという風には思っています。これから試合が続く。試合をやっていけば、上がってくると思います」と前向きに話した。
 

　実際、冨安は直近４試合中３試合で先発し、残りの１試合も途中出場でピッチに立った。彼の言葉通り、過密日程を戦うチームの中で日本代表DFはグイグイと調子を上げてきた。

　もちろん冨安の視界の先には、来月20日に開幕するカタール・ワールドカップもある。「ワールドカップまでアーセナルでかなりの数の試合があるので、まずはそこでチームを助けることが第一前提」と４年に一度の祭典を視野に入れながら、まずはアーセナルでのプレーに集中したいとコメント。

「あとはコンディションのところ。怪我をしないというところも意識しながらやっていきたい」と続け、昨シーズンに苦しめられた怪我を再発しないよう細心の注意を払っていると述べた。

　９勝１敗と好調のアーセナルは、久しぶりにプレミアリーグの首位につける。そんな上昇気流に乗るアーセナルで、23歳のサムライはどんなプレーを見せてくれるか。アーセナル、そして冨安の活躍から、今後も目が離せなさそうだ。

取材・文●田嶋コウスケ

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