コロンビア戦の勝利に貢献した乾は、続くセネガル戦、０－１で迎えた34分、同点弾を決める。ペナルティエリア内で長友佑都からパスを受けると、狙いすました右足ショットでネットを揺らす。

「コースとしては狙った通りのところに行きました。相手もちょっと触ってたんでラッキーでしたね。１点取れて楽になりました」と本人も安堵感を吐露した。

　値千金の一撃をお膳立てしてくれた長友には心からの感謝を口にする。

「あの時の佑都君との縦関係は、攻撃も守備もサッカー人生の中で一番やりやすかった」とも語ったほど。そういった良好な関係性をチーム内で構築できなければ、あれだけの活躍は難しいのだ。

「ロシアの時はチーム全体のバランスがすごく良かった。右に頑張れる（原口）元気がいて、対人に強い（酒井）宏樹と組ませたのがすごく良かったし、左もやりやすかった。一人ひとりがそれぞれの良さを出し合えるような形でした」と乾もしみじみと語る。

　最高のハーモニーが、“W杯１大会で２ゴール”という、稲本潤一、本田と史上３人しかいない偉業達成の源となったのは、紛れもない事実だろう。
 

　乾自身が「カタールでの日本の切り札になる」と見ている三笘薫にしても、それは同じ。周囲との良い関係がなければ輝けない。今回の森保ジャパンのベストバランスとは一体、どのようなものなのか。指揮官や選手たちはそれをしっかりと模索すべき。乾の発言は重いのだ。

「とはいえ、今の時期はワールドカップのことを考えずにチームで結果を残すべきでしょうね。ワールドカップのことはワールドカップに入ってから考えればいい。あとは怪我をしないことですね。

　自分はもともと（中村）俊輔さんや真司みたいにずっと10番を背負ってきた人間じゃなかった。絶対的なスタメンでもなかった。そういう人間は所属チームで結果を残すことだけを考えたらいい。あとは運ですね。そのうえでメンバー入りし、本番を迎えたら、楽しんでやればいい。そうすれば結果はついてくる。僕はそう思います」

　カタールでの爆発を目ざす者たちには、４年前に結果を残したアタッカーの経験談にぜひとも耳を傾けてほしい。そして第２、第３の乾貴士の出現を強く願いたいものである。

取材・文●元川悦子（フリーライター）

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