逆転劇の立役者は、自身の活躍に浮かれた様子は一切見せず、ミックスゾーンでは静かに言葉を紡ぎながら、久々の勝点３の要因を次のように語った。
 
「和哉にしても、後から入ってきた選手がしっかり仕事をしてくれた。ヒラ（平岡康裕）は普段はやらないSBでも十分に対応できていたし、ミツ（六平光成）も途中から入って、前から追えていたので」
 
　試合後のロッカールームでは、当然のように選手たちは喜びを爆発させていたようだが、しかし、いつまでも余韻に浸っているわけにはいかない。
 
「これで状況は少しは変わりましたけど、やっぱりまだ降格圏内ですし。そこはしっかり考えながらやっていかなければいけないと思います」
 
　ピーター・ウタカとともに、これでチームトップタイのシーズン９ゴール目を数える大前は、エースとしての自覚や責任感を忘れず胸に秘めて戦っていくつもりだ。
 
「点を取って勝てたので、とりあえずホッとはしていますけど、また中断期間が明けてから、ホームで負けられない試合（６節・湘南戦、７節・新潟戦）がある。そこでもまた、責任感を持って戦っていきたいです」
 
　相手のボランチを監視するなど、守備面でも少なくない仕事量を求められているが、それをこなしたうえで、やはり大前に期待するのは得点につながるフィニッシュワークだ。
 
「もっとゴール前で関わっていきたい。あの２点以外に、ゴールの近くで仕事ができていなかった。そういう時間が増えれば、守備陣も楽になれるはずなので」
 
　攻守両面で存在感を示さなければならない大前のさらなる奮起と活躍が、清水の命運を握っていると言っても過言ではない。
 
取材・文：広島由寛（サッカーダイジェスト編集部）