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サッカー中継にもたらした革命。なぜ高校サッカー選手権は日テレ系列外でも放送されるのか【選手権100年】

カテゴリ:高校・ユース・その他

平野貴也

2021年12月31日

CMを挟まないサッカー中継は選手権が初

開幕した第100回大会でも、試合中にCMが挟まれることはない。日本のサッカー中継において、選手権で初めて実現した試みだ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 高校サッカーの中継は、革新的な手法も生み出した。日本の民間放送局で試合中にCMを挟まないサッカー中継を行なったのは、高校選手権が初めてだ。

 のちに1986年トヨタカップ(クラブワールドカップの前身)の第7回大会、ステアウア・ブカレスト(ルーマニア)対リーベル・プレート(アルゼンチン)戦での唯一の得点がCM放送中に決まってしまい、以降はCMを挟まなくなったが、高校選手権ではその数年前からCMなしの中継を行なっていた。

 大会のスポンサー契約を獲得した電通の営業担当に直接頼みに行った坂田さんは「もう会社(日本テレビ)に来ないくらい偉くなっていた方だったから、会いに行ったんです。そうしたら『先方は宣伝効果なんか期待していないから、大丈夫だよ』と言われました。本当の一流企業が社会貢献として大会を支えてくれていたんです」と、当時を振り返る。電通は会場内に広告看板を設置してテレビ中継に映すという現在につながる手法を確立し、大会の市場価値を高めた。

 放送事業の中心にいた坂田さんは、大会に関心が集まるように、多くの人を巻き込んだ。中継が始まった当時は、まだ国内にサッカーを現地観戦する文化がなく、動員に苦労した。そこで、動員のリーダーをハーフタイムにインタビューして貢献に応えた。大会を盛り上げる人の価値を高め、大応援でチームを後押しするスタイルを促進する意味合いがあったという。

 また、各地の熱心なサッカー指導者を解説者に起用。指導者が勤務先で評価を得るきっかけとなり、遠征出張などで指導者が職場の協力を得やすい環境作りにも貢献した。一般人の関心をいかに獲得するか。番組作りでも、中継現場となる試合会場の環境作りでも、工夫を重ねていった。

 近年は「最後のロッカールーム」というタイトルで、全国大会敗退チームの試合後の様子を伝える映像が視聴者の感動を呼んでいる。これを最初に行なったのも坂田さんだった。

 1978年度、第57回大会の準決勝だ。のちに2012年ロンドン五輪でU-23日本代表監督を務める関塚隆が主将の八千代高校(千葉県)のロッカーにカメラを入れた。青木克己監督が、東京教育大サッカー部の同期生で理解を得られたためだ。

「大会を多くの人に注目されるものにしようとしていることを青木は分かってくれていて、撮らせてくれました。良いものが撮れたので、その日の夜に放送しました。翌朝、電話がかかってきて、今すぐ日本サッカー協会に来いと言われ、『君が熱心なのは分かるが、あそこはカメラが入るところではない』と関係者から言われました。今、どうやってロッカーを撮れるようになったのか、私は知りませんが、なかには良い映像もありますよね」

 今も全国大会前にグラウンドや学校へ取材に行くと、各テレビ局の取材陣を見かけることがある。まだ誰もサッカーを見てくれなかった時代から、系列の枠組みを超えて工夫を重ね、人々の関心を集めていったテレビマンたちの努力もまた、この大会が注目の第100回を迎えるに至った歴史の大きな支えだ。

<了>

取材・文●平野貴也
 
PROFILE
坂田信久/さかた・のぶひさ
1941年2月20日、富山県生まれ。富山中部高時代に全国高校サッカー選手権に2度出場。東京教育大(現・筑波大)でもプレーした。卒業後の1963年に日本テレビ入社。スポーツ局で辣腕を振るい、選手権の首都圏移転やトヨタカップ誘致に関わり、箱根駅伝の完全生中継化にも尽力した。東京ヴェルディ1969元社長。国士舘大学・大学院元教授。

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