来日したウィルシェアに直撃インタビュー
さて、EUROもあったこの夏はあっという間にオフが過ぎ去っていった印象だけど、僕はプレシーズンマッチが好きでね。なぜなら、選手をより間近で取材できるチャンスがあるから。とくにアメリカやアジアへのツアーはスポンサーが絡んでいるから、シーズン中は難しい選手のインタビューが取れたりする。
プレシーズンの取材で覚えているのは、他でもない日本で実現したジャック・ウィルシェアのインタビュー。2013年の夏だった。当時のウィルシェアはアーセナルのライジングスターで、サポーターから絶大な支持を集めるガンナーズの未来だった。
『ワールドサッカーダイジェスト』の一員として聞き手を務めた僕は、いまの加藤編集長とともにインタビュー場所に指定された埼玉スタジアムに向かった。浦和レッズとの親善試合を翌日に控えたアーセナルは、この日は練習やスポンサー絡みのイベントをこなし、その終わりにウィルシェアは時間を割いてくれた。
インドネシアとタイも回った長旅の疲れがさすがにあったようだけど、ウィルシェアは一つひとつの質問に丁寧に答えてくれた。これにはある“秘策”が功を奏してね(笑)。故郷の味がそろそろ恋しいのではないかと思って、持参していたクリスプ(ポテトチップス)やビスケットを差し入れしたら、案の定、喜んでくれた。
スキルフルで、勉強熱心で、とても良いプレーヤーだったのに、怪我が多かったウィルシェアは決定的なブレイクスルーを果たせなかった。残念だね。
プレシーズンの取材で覚えているのは、他でもない日本で実現したジャック・ウィルシェアのインタビュー。2013年の夏だった。当時のウィルシェアはアーセナルのライジングスターで、サポーターから絶大な支持を集めるガンナーズの未来だった。
『ワールドサッカーダイジェスト』の一員として聞き手を務めた僕は、いまの加藤編集長とともにインタビュー場所に指定された埼玉スタジアムに向かった。浦和レッズとの親善試合を翌日に控えたアーセナルは、この日は練習やスポンサー絡みのイベントをこなし、その終わりにウィルシェアは時間を割いてくれた。
インドネシアとタイも回った長旅の疲れがさすがにあったようだけど、ウィルシェアは一つひとつの質問に丁寧に答えてくれた。これにはある“秘策”が功を奏してね(笑)。故郷の味がそろそろ恋しいのではないかと思って、持参していたクリスプ(ポテトチップス)やビスケットを差し入れしたら、案の定、喜んでくれた。
スキルフルで、勉強熱心で、とても良いプレーヤーだったのに、怪我が多かったウィルシェアは決定的なブレイクスルーを果たせなかった。残念だね。
最後に、プレシーズンマッチにまつわる面白エピソードをひとつ。我が愛するウェストハムがハリー・レドナップ監督に率いられていた94年、アウェーに乗り込みオックスフォード(当時3部)と試合をしたときの話だ。
こぢんまりとしたスタジアムは、グラウンドとスタンドがすぐ近くで、ベンチと並ぶようにして立ち見席があった。ウェストハムのベンチ横に陣取ったウェストハム・ファンの若い男が、ビールをあおり、タバコをふかしながら、やがて野次を飛ばしはじめる。スタンドでの酒もタバコもまだ許されていた時代だ。男が罵声を浴びせた標的は、ウェストハムのFWリー・チャップマンだった。
「下手くそ! 俺のほうがよっぽどマシだ!」
のべつまくなしの野次だ。レドナップがついに怒り心頭に発し、ハーフタイムに驚きの行動に出る。そこまで言うならお前がやってみろと、ファンのその男、スティーブをロッカールームに連れて行き、ユニホームに着替えさせると、チャップマンとの交代で後半のピッチに立たせたんだ。
これだけでも信じられないのに、もっと信じられないミラクルが起きる。“ビッグマウス”スティーブが、まさかゴールを決めるなんて! いまではとても考えられない、大らかな時代の牧歌的な話。
文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)
Steve MACKENZIE
スティーブ・マッケンジー/1968年6月7日、ロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでプレー経験がある。とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からのサポーターだ。スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝した。現在はエディターとして幅広く活動。05年には『サッカーダイジェスト』の英語版を英国で手掛け出版した。
※『ワールドサッカーダイジェスト』2021年9月2日号より加筆・修正
こぢんまりとしたスタジアムは、グラウンドとスタンドがすぐ近くで、ベンチと並ぶようにして立ち見席があった。ウェストハムのベンチ横に陣取ったウェストハム・ファンの若い男が、ビールをあおり、タバコをふかしながら、やがて野次を飛ばしはじめる。スタンドでの酒もタバコもまだ許されていた時代だ。男が罵声を浴びせた標的は、ウェストハムのFWリー・チャップマンだった。
「下手くそ! 俺のほうがよっぽどマシだ!」
のべつまくなしの野次だ。レドナップがついに怒り心頭に発し、ハーフタイムに驚きの行動に出る。そこまで言うならお前がやってみろと、ファンのその男、スティーブをロッカールームに連れて行き、ユニホームに着替えさせると、チャップマンとの交代で後半のピッチに立たせたんだ。
これだけでも信じられないのに、もっと信じられないミラクルが起きる。“ビッグマウス”スティーブが、まさかゴールを決めるなんて! いまではとても考えられない、大らかな時代の牧歌的な話。
文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)
Steve MACKENZIE
スティーブ・マッケンジー/1968年6月7日、ロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでプレー経験がある。とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からのサポーターだ。スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝した。現在はエディターとして幅広く活動。05年には『サッカーダイジェスト』の英語版を英国で手掛け出版した。
※『ワールドサッカーダイジェスト』2021年9月2日号より加筆・修正