転機は突然、訪れた。11年5月にカタール投資庁の子会社である『カタール・スポーツ・インベストメント』(QSI)にパリSGが買収されたのだ。ここから欧州屈指のビッグクラブへと急速に変貌を遂げていく。
QSIとパリSGの会長に就任したナセル・アル・ケライフィは、カタール王族と繋がりが深く、カタール・ワールドカップ組織委員会でも要職にある人物だ。実質的にカタールのサーニー王族(国家)が保有するクラブとなったパリSGは、この10年間にオイルマネーをふんだんに投入し、まさに金に糸目を付けぬ戦力補強でチームを成長させてきた。
カタール資本となってからは、12-13シーズンに19年ぶりとなるリーグ・アン優勝を成し遂げると、リーグ4連覇を達成。20-21シーズン終了時点で、計27個の国内タイトルを獲得し、第二の黄金期を迎えている。
ズラタン・イブラヒモビッチ(12~16年)をはじめ、現チェルシーのチアゴ・シウバ(12~20年)、現マンチェスター・Uのエディンソン・カバーニ(13~20年)らビッグネームだけでなく、現在もチームの中軸として活躍するマルコ・ヴェッラッティ(12年~)、マルキーニョス(13年~)、アンヘル・ディ・マリア(15年~)らを高額の移籍金で獲得し、国内のライバルを圧倒する戦力とクラブの価値の両方を高め続けている。
カタール資本の参入で欧州屈指のビッグクラブに
その最たる例が、17年夏に獲得したネイマールとキリアン・エムバペだ。前者はバルセロナから現在も世界最高額となる移籍金2億2200万ユーロ(約288億6000万円)で、後者は18歳でモナコから移籍金1億4500万ユーロ(約188億5000万円)でパリSGへと加入すると、過去4シーズンのタイトル獲得に大きく貢献しただけでなく、クラブのアイコンとしても重要な役割を担っている。
パリSGは、今夏の移籍マーケットではアシュラフ・ハキミを獲得するために移籍金6000万ユーロ(約78億円)をインテルに支払ったのみで、メッシやセルヒオ・ラモス、ジャンルイジ・ドンナルンマ、ジョルジニオ・ヴァイナルダムの4人は移籍金ゼロで確保。まだ補強予算を残すため、レオナルドSDは、さらなる陣容強化を目論んでいる。
超大型補強でリーグ・アン優勝はもちろん、初のCL制覇すらも“ノルマ”となったパリSG。すべてのタイトルを獲得し、クラブの価値を上げることができるか注目だ。
構成●ワールドサッカーダイジェスト編集部