【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の二十二「ボランチの本質」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年06月12日

慢性的なCB不足の日本で、ボランチは生命線となる存在。

南アフリカ・ワールドカップでアンカーを担った阿部。日本の弱点でもあるCBを補強するため、守備のバランスを取っていた。 (C)SOCCER DIGEST

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 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、ウズベキスタン戦で先発させた今野泰幸を前半で交代させている。今野は基本的な守備能力が高い選手だが、「気が利く」という点で指揮官は不満を持った。相手が2トップでバックラインが押し込まれていた時、ボランチの今野は自らの判断でわずかにポジションをずらし、CBと近い距離を保ち、守備の補強をすることができなかったという(結局、ハリルホジッチは後半からバックラインの前にCBの水本裕貴を送り込んだ)。
 
 日本代表が世界の列強と戦う時、ボランチには守備のバランスを重視した仕事が求められるかもしれない。
 
 日本サッカーは慢性的にCBの人材を欠いている。南アフリカ・ワールドカップを戦った中澤佑二と田中マルクス闘莉王のセットは過去最強のコンビと言えるが、彼らにしても世界のトッププレーヤーと比較した場合、「裏に抜けられるとスピードに脆い」など短所がはっきりしていた。岡田武史監督はその不足を補うため、阿部勇樹をアンカーに置いて守備のバランスが崩れるのを防いだ。
 
 どんな戦術であれ、ボランチは生命線となる。
 
 アルベルト・ザッケローニ監督が率いた代表がブラジル・ワールドカップで一敗地にまみれたのも、頼みにしていた長谷部誠と遠藤保仁の2ボランチがコンディションを維持できなかったことが最大の要因だろう。当時の日本代表が成果を上げていた試合では、このふたりが巧みに攻守のバランスを取っていた。それが失われてしまった時、チームは必然的に機能性を低下させてしまったのである。
 
 ボランチが機能しているチームは、百戦して百戦危うからずや。
 
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
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