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【連載】識者同士のプレミア放談「アラダイスが歩いた跡にはぺんぺん草も生えない!?|シーズン総括・第2弾」

カテゴリ:ワールド

田邊雅之

2015年06月05日

俗にいう「荒野の7人」をイングランド代表に。

16-17シーズンから使用する新スタジアムをバックに、左からFWサコ、DFリード、MFノーブルがにっこり。ロンドン五輪のメイン会場をサッカー用に改修したオリンピック・スタジアムで、ウェストハムはエリートの仲間入りを目指すというが、はたして――。 (C) Getty Images

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山中:真面目な話をすると、あの頃のブラックバーンにはアラン・シアラー&クリス・サットンの通称「SAS」コンビがいて凄かった。(SASはイギリス空軍の略称)。たしか94-95シーズンの優勝というのは、ユナイテッドに競り勝ったんですよね?
 
田邊:そう。前のシーズンの借りを返した形になった。
 
山中:今では想像もつかない。ああいうクラブがいなくなるのは残念な限りですね。他にもプレミアから消えていったクラブはたくさんありますけど。
 
田邊:イーウッド・パークも狭くて箱形という、いかにも「フットボールグラウンド」らしい味のあるスタジアムだし、ブラックバーンの場合はエンブレムも、かっこいいじゃないですか。
 
山中:まさにランカシャーの赤いバラ。しかもプレミア優勝当時の監督は、70~80年代にかけて黄金時代のリバプールを支えた花形のひとりであるケニー・ダルグリッシュだった。ロマンがありますよね。
 
田邊:と思います。長らくオーナーをやっていたのも、地元で製鉄業を営むジャック・ウォーカー。そういうところまで含めて、イングリッシュフットボールの古き良き時代を象徴するようなクラブのひとつだった。
 
山中:それはウェストハムも一緒ですよね。もともとクラブの前身は、テムズ川沿いの造船所で働いていた労働者のクラブになる。だからエンブレムにもハンマーがあしらってあって。サービストークじゃなくて、僕もアプトン・パークはかなり好きなスタジアム。
 
田邊:そう言ってもらえると嬉しいです。ついでに自慢させてもらうと、ウェストハムというのは、若手の育成に定評があるクラブで、2010年にはイングランド代表にユース出身の選手を7人も送り込んでいた。
 
山中:俗にいう「荒野の7人」。僕が大好きなジョー・コールや、レジェンドのランプス(フランク・ランパード)、そしてJT(ジョン・テリー)もウェストハムで育ててもらいました。自他ともに認める「アカデミー・オブ・フットボール」。
 
 しかしアラダイスの頃は、ウェストハムのユース出身で、若くて優秀なイングランド人選手が台頭してきた印象があまりない。
 
田邊:そう。リオ・ファーディナンドの後継者と言われたりするリース・オクスフォードのような選手もいるのに、結局チャンスはもらえなかった。そういうところにも将来への不安は漂っている。
 
山中:でも、ビッグ・サム(アラダイスの愛称)時代(11~15年)にアプトン・パークでやっていたサッカーがいかに内容の荒れたものになっていたとしても、2016年からはアプトン・パーク自体が使われなくなるからいいじゃないですか(オリンピック・スタジアムへ本拠地移転)。嫌な思い出を、きれいさっぱり忘れられる(笑)。
 
田邊:いやいや。だからこそ僕は心配で。サッカーもつまらなくなって、スタジアムもあんな味気のないプラスチッキーなところに移ってしまったら、目も当てられない(笑)。
 
山中:綺麗でモダンなスタジアムですけど、あそこを満員にするのは難しいでしょうね。トットナムがウェストハムとスタジアムの使用権を争っていた時には、当時のスパーズの監督で、現役時代からハマーズと縁のあるハリー・レドナップが、「淋しい墓場になっちまう」と言って、古巣の行く末を案じていましたから。実は「狸親父」丸出しで、雇い主であるスパーズに加勢していたんですが。
 
田邊:そう。その半分も埋まらないスタジアムで、なおかつ2部に落ちていくという悪夢のような光景が水晶玉に映っているような気がして。
 
山中:じゃあ最後の良い思い出を残すために、来シーズンは、これまで以上にアプトン・パークに通わないと。そしていつものようにスタジアムに行くたびに、同じようなジャージとかTシャツとか、どうでもいいグッズを懲りもせずに山ほど買い込む。
 
田邊:アプトン・パークにはもちろん通いますけど、お土産を買い込むのはもうやめます。円安でそれどころじゃないですから。
 
山中:それはそれで残念な気が(笑)。なんか今日はアラダイス編になっちゃいましたね。
 
田邊:……、すみません。プレミア総括の続きは、次回にもう一度やり直しましょう(苦笑)。
 
構成・文:田邊雅之
協力:山中忍
 
【識者プロフィール】
田邊雅之
1965年、新潟県生まれ。『Number』をはじめとして、学生時代から携わっていた様々な雑誌や書籍の分野でフリーランスとして活動を始める。2000年からNumber編集部に所属。プレミアリーグ担当として数々の記事を手がけた後、南アフリカW杯を最後に再びフリーランスとして独立。主な著書に『ファーガソンの薫陶』(幻冬舎)、翻訳書に『知られざるペップ・グアルディオラ』(朝日新聞出版)」等がある。最新の翻訳書は『ルイ・ファンハール 鋼鉄のチューリップ』(カンゼン)。贔屓はウェストハム。
 
山中忍
1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、チェルシーのサポーター。
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