田邊雅之：お疲れさまです。プレミアのシーズン総括、第２弾です。
 
山中忍：今回は田邊さん待望のウェストハム編じゃないですか！
 
田邊：お恥ずかしながら。戦術論でとりあげるほどのチームではないですが（笑）。
 
山中：サム・アラダイスもやはり首になってしまいましたね。でも、ダウニングをトップ下で起用したアイデアは結構、良かったんじゃないですか？
 
田邊：まあ、そうではあるんですが……。ただ個人的には、シーズンを通してやっぱり、あまり良いサッカーをしていなかった印象が強い。
 
　キャロルが怪我をした後は、極端にロングボールに頼ることはなくなりましたけど、身も蓋もないサッカーをしていたのは事実で。
 
山中：とはいっても、４位でクリスマスを過ごした前半戦は、攻撃意欲も旺盛で結果も出ていましたよね。
 
　後半戦にしても、２月にマンチェスター・ユナイテッドを苦しめて１-１で引き分けた頃は、なんとアラダイスがファン・ハールを「ロングボール・ユナイテッド」だと批判したりして（笑）。
 
田邊：まったく分不相応な発言。たしかにハイパントじゃなくて、グラウンダーのボールは多かったですよ。だけどそれはキャロルが膝を怪我していたからに過ぎなくて、カウンターサッカーであることには違いない。
 
山中：愛情の裏返しで厳しいですね、田邊さん。僕は、ダウニングの意外なトップ下起用が板について、キャロルの調子も一時期、良くなったシーズン折り返しの頃には、真剣にトップ６を争えるんじゃないかと思ったりしました。
 
　実際、某誌でプレミアの前半戦の総括をした時には、最優秀監督賞にアラダイスを選んだ記憶もありますから。
 
田邊：彼をそこまで褒めたのは、山中さんとかつてのアレックス・ファーガソンくらいでしょう（笑）。
 
山中：今ではウェストハムのオーナーと同じくらい、後悔していますけどね（笑）。
 
田邊：ただし本当に怖いのはこれからなんですよ。アラダイスというのはものすごくプラクティカル、悪い表現というか正しい表現を使うと、結果重視の身も蓋もないサッカーをする人間なので、彼が監督を辞めた後のチームはぺんぺん草も生えなくなって、長期的にダメになっていく。
 
山中：たしかに。ボルトン、ブラックバーン、ニューカッスル、みんなそうですね。
 
田邊：ブラックバーンの場合は、アラダイスの次に監督になったスティーブ・キーンも相当問題があったし……。
 
山中：クラブの買収劇も悪影響も与えましたけど、ポール・インスが首になって、アラダイスが監督になったあたりから、明らかに雲行きが怪しくなりましたね。ポール・インスはプレミア初の黒人監督という興味もあって、個人的に応援していたんですが。
 
田邊：だからアラダイスがいなくなったのは嬉しいけど、来シーズン以降が恐ろしくて。チームの「焦土化」が密かに進んだことは、遅かれ早かれ明らかになってくると思うんですよ。
 
山中：ブラックバーンなんか、今は２部のチャンピオンシップで中位でしょ？
 
田邊：そう。ブラックバーンというのはプレミアリーグがスタートして以降、ビッグ４以外で唯一、優勝を経験したようなクラブだったのに（優勝は94-95シーズン）。
 
山中：ユナイテッド、アーセナル、シティ、あとはどこでしたっけ？　あの青いユニホームが粋で、監督もクールなクラブ。
 
田邊：はいはい。チェルシーですよ。チ・エ・ル・シー！
 
山中：ありがとうございます。なんか悪いですね、毎回、個人的な色（カラー：サポートしているクラブ）が隠せなくなってしまって。
 
田邊：いいえ、どういたしまして。