【喜熨斗勝史の欧州戦記|第4回】ヨーロッパの育成方針は「肯定的評価」。アンサーを提示するのではなく――

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェスト編集部

2021年07月21日

ロジカルなリスクならばOKと評価される

22歳のルカ・イリッチ(写真左)と18歳のネマニャ・ヨビッチ(写真右)。セルビアでは若手のプレーに対して肯定的に評価してあげられる環境が整っている。

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 欧州クラブは才能、可能性のある若手は練習で鍛えるのではなく、試合で起用する傾向にあります。分母が良いので、トップチームに吸い上げられる選手の質も高いのは事実ですが、その前段階である指導者の“見極め力”も素晴らしいものがあると感じます。

 欧州はサッカー強豪国が多く、ワールドカップに出場するには欧州内で勝ち抜かなければなりません。なので、目線が常に高い位置にある。そのトップリーグで活躍するには――というところから逆算して育成に乗り出しています。私がいるセルビアを例に挙げてみましょう。

 ここでは個のプレーに対して肯定的に評価してあげられる環境が整っていると感じます。例えばボールを味方に落として自分は前に出れば良い時に、ターンして前を向いて仕掛けようとします。ミスしたら“落とせよ”となりがちですが、ターンをして前を向いて勝負したことがロジカルなリスクならばOKと評価されます。

 当然、指導者はボールを落とすアイデアも与えますがアンサーとして提示するのではなく、選手個々の判断力を磨かせます。トップで間違えた判断をしないように育成で失敗して学んでいき、18歳や19歳でトップリーグでプレーできるだけの基本原理や自分ができることを身に付けていきます。
 
 またポジションに捕らわれた練習だけではなく、CBの選手に1対1の練習もさせています。現代サッカーにおいては常にどこからでも攻撃参加を求められる。そのなかで適切なプレーができるようにさせていくのです。そうなると子どもにフォーカスされがちですが、実は大事なのは指導者のほう。日本国内には優秀な育成指導者の方々がいらっしゃいますが、もっともっと日本サッカーが強くなっていくには今は海外で通用する指導者の育成が大事になるのではないか、と。

 日本が欧州よりも下にあると言うわけではありません。育成の最終形態は自国リーグの強化です。例えばイングランドの代表選手はほぼ全員がプレミアリーグでプレー。対して日本もセルビアも代表選手は他の欧州リーグでプレーしています。莫大な資金も必要になりますが、自国リーグが世界レベルになれば若手も自国リーグでプレーすればいい。そのためにも育成指導者が海外の最先端育成を自分の目で見て、肌で感じて、自分で理解し、日本人の育成年代に落とし込んでいかないといけないのかと思っています。
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