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田中碧が選んだ独2部からのスタート… 欧州で這い上がれる日本人選手とそうでない選手の分岐点とは?

カテゴリ:日本代表

加部 究

2021年07月09日

総じて日本人選手たちはボール扱いには長けても、守備に懸念があると見なされがち

 一方対照的に、早くから将来を嘱望されながらドイツで苦戦を強いられたのが宇佐美貴史だった。19歳でバイエルンという選択については、ドイツ関係者たちも「あまりに早過ぎた」と口を揃えるが、結局攻撃的資質の高さは認めながらも「戦えない」という評価が浸透してしまったようだ。宇佐美とともにプラチナ世代を象徴する存在だった柴崎岳も、23歳でスペイン2部のテネリフェでスタートし1部のヘタフェに移籍するまでは良かったが、故障などの不運もあり非凡な才の割には飛躍が遠い。圧倒的なパスセンスを備えながら、守備力はプロ入り後に磨いていった。

 結局香川真司や小野伸二のように指揮官に比類ない特徴を買われない限り、総じて日本人選手たちはボール扱いには長けても、フィジカルコンタクトを中心とした守備に懸念があると見なされがちだ。スペインで育った久保建英でさえも、同じテーマと向き合っている。逆にDFからスタートした遠藤やアギーレに全幅の信頼を置かれた細貝などが高く評価されたのは必然で、他にもフィジカルに長けた中田英寿や献身的な岡崎慎司などは、そこで減点されることがなかった。
 
 また気になるのは、Jから下部リーグへ所属した選手に故障が目立つことだ。日本をアジア王者に導いた李忠成は、サウサンプトンへ移籍しチームはプレミア昇格を遂げたが、最初のシーズン途中で故障。大卒で当時2部のケルンに移籍し、1部昇格に貢献した長澤も、翌シーズンの開幕前に靭帯断裂の大怪我をした。これらのケースだけで結論づけるのは早計だが、概して2部リーグがレフェリーのジャッジも含めてトップリーグ以上にチャンスに飢えた選手たちの荒い戦場になっているという見方は出来る。バルセロナBという最難関を選択してしまった安部裕葵も、現状では鹿島時代から後退の印象が否めない。やはり諸条件を踏まえ過去の成功例と照らし合わせても、日本代表クラスは1部中堅以上のクラブからの出発が理想で、下から這い上がっていく道のりの険しさは国内の比ではない。

 かつてドイツ2部のブラウンシュバイクでプレーした風間八宏氏は「フランス、オランダ、ベルギーのクラブからオファーがあったが、当時はそれらの国とドイツ2部が同じくらいという感覚だった」という。だが現状で2部のクラブでは同国内でしか戦えないが、他国の上位クラブなら欧州の舞台でアピールするチャンスが訪れる可能性もある。

 22歳の田中碧は、五輪がなければすでにフル代表のレギュラー格でプレーしていたはずだ。要するに国内では極めつけの優良物件だった。ドイツ2部でのスタートという慎重な選択には当人なりの理由があるのだろうが、逆に同レベルの国のリーグチャンピオンが22歳の主力を他国の2部に貸し出す選択をするとは考え難い。

取材・文●加部 究(スポーツライター)
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