「あれ……俺って周りがあってこそ成り立っているのかな」
長崎総科大附には後に高卒でセレッソ大阪に進んだ(インターハイ時点では決まっておらず、選手権直前の12月に発表)安藤瑞季と荒木駿太(駒澤大へ進学、2022年よりサガン鳥栖入りが内定)の二枚看板がおり、このキーマンをどう抑えるかがポイントだった。
安藤に対しては2年生の関川郁万(鹿島アントラーズ)と瀬戸山俊のCBコンビが1点に抑え込み、荒木に対してもMF三本木達哉がスッポンマークで封じ込め、試合は2−1の勝利を掴んだ。この試合、宮本はPKで同点ゴールを挙げているが、試合後まったくと言っていいほど達成感がなかった。
「あれ……俺って周りがあってこそ成り立っているのかな」
心の底から湧き起こった疑念が確信に変わったのは、準決勝の前橋育英戦と決勝の日大藤沢戦だった。前橋育英戦、相手キーマンのボランチ田部井涼(法政大に進学、2022年に横浜FC入りが内定)をマンマークで封じたのは、3回戦での宮本の姿に触発され、自らその役割を申し出たボランチコンビを組んだ宮本泰晟だった。宮本泰は気迫漲る守備を見せ、試合途中に相手に与えてしまったPKではGK薄井覇斗がビッグセーブ。決勝弾は関川の周りの度胆を抜く弾丸ヘッドだった。そして決勝の日大藤沢戦では途中出場の2年生FW熊澤和希(流通経済大)が個人技から決勝弾を叩き出し、チームを頂点に導いた。
「最高の結果を出したにもかかわらず、自分のパフォーマンスにおける自己評価が全く上がらなかったんです。他の選手の活躍のおかげで優勝できたと言うか、僕は『チームを勝たせられるキャプテン』ではあったと思うのですが、『チームを勝利に導く選手』ではなかったんです。実はずっと自分には絶対的な武器がないと思っていて、薄々感じていたことだったんです。それを高卒プロになりたいという思いで必死に隠してきたけど、逆にインターハイで明確に突きつけられた」
リアルに自分の現在地が分かってしまった。その瞬間、「なんでオファーが来ないんだ」から、「だからオファーがこないのか」に変わった。そして、インターハイが終わっても具体的なオファーは来ず、彼は流通経済大に進学することを決めた。
「大学に行くと決めた時、『絶対に1年から出場をしてプロ内定を勝ち取る』という覚悟を持っていました。だからこそ、1年の時から4年生に対しても自分の意見や意思をはっきり伝えるようにしました。ただ試合に出ているだけでなく、プロにふさわしい選手になるために大学生活に懸けていました」
リアルに自分の現在地が分かってしまった。その瞬間、「なんでオファーが来ないんだ」から、「だからオファーがこないのか」に変わった。そして、インターハイが終わっても具体的なオファーは来ず、彼は流通経済大に進学することを決めた。
「大学に行くと決めた時、『絶対に1年から出場をしてプロ内定を勝ち取る』という覚悟を持っていました。だからこそ、1年の時から4年生に対しても自分の意見や意思をはっきり伝えるようにしました。ただ試合に出ているだけでなく、プロにふさわしい選手になるために大学生活に懸けていました」