ジャマイカ戦の4ゴールを徹底検証――明らかになった酒井宏樹のスローインの有効性

カテゴリ:連載・コラム

河治良幸

2021年06月13日

瀬古は得意のビルドアップでひとつ結果を出した

左右の足を遜色なく使える瀬古。優れた配給力で攻撃をサポートする。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

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 3点目は後半頭から登場した上田綺世の鮮やかなループでのゴールだったが、アシストした三笘の見事なスルーパスに言及するべきだろう。しかも、おそらく横内昭展監督は後半15分を目処に、同じ左サイドの相馬勇紀への交代をプランニングしていた可能性が高く、前回のガーナ戦よろしく、そういう時間帯にゴールに直結するプレーを出せる三笘の勝負強さを感じさせる。左から中にドリブルを仕掛けた三笘と前線で裏に抜けた上田。この年代の代表はもちろん、ユニバーシアードなどで一緒に組んでいたからこそ通じるイメージがゴールに結びついた形だが、もう一人の貢献も触れておきたい。

 このシーンは一見してカウンターのような速攻に見えるが、実際はボールをつないでいたところから、ジャマイカのディフェンスを縦に間延びさせることが大きかった。GKの鈴木彩艶からボランチの田中が受けて、左センターバックの瀬古歩夢に戻す。そこでジャマイカがプレスをかけにくるが、瀬古は2タッチ目で左足のパスを三笘に通した。

 三笘は右足でファーストコントロールしながら前を向き、中央で久保が開けたコースをドリブルしながら右足でディフェンスの間に通すという形だった。起点になった瀬古は右利きだが、左右の足を遜色なく使うことができる。追加招集でラストチャンスにかけていた瀬古としては後半の45分を無失点に抑えたこともそうだが、やはり得意のビルドアップで、ひとつ結果を出したことは大きい。

 4点目は3バックに変更した後で生まれた。三笘に代わり、左ウイングに起用された相馬が大きな仕事をした。酒井からの長めのスローインを中央で久保が受けると、ジャマイカのディフェンスが同サイドに寄ったことで生じた左スペースを相馬が走りながら受ける。GKと1対1になりかけるが、左にかわしたところで体勢が難しくなるが、右側から堂安が飛び込んできたことで、向きを立て直した相馬はパスを選択。堂安は落ち着いてボールをコントロールしてから左足で流し込んだ。
 
 最後は流れの中でタイミング良くボックス内のポケットを逃さなかった堂安と、自分で打ちにくい状況から冷静にパスを選択した相馬のプレー選択がゴールに結びついた。また1点目と同じく酒井のスローインは明らかなロングスローでなくても、確実に距離の離れた味方に投げられるということで、非常に有効になりそうだ。

 そして、なんと言っても久保の視野の広さ、判断スピードは目を見張るが、4ゴールに絡んだ選手の他にも、ディフェンスでの奮闘や攻撃のリズムを作るプレーなど、一つひとつがアピール材料になりうるものだった。もちろんジャマイカの勢いある守備や身体能力に対してプレーがズレるシーンや後手を踏むシーン、ボールロストもあったが、そうしたものも全体でカバーし合いながら、決して楽ではない強度のゲームで4-0という勝利に結び付けた。

 試合後には全員で記念撮影が行なわれたU-24日本代表。最終的には金メダルを目標に決勝まで見据えた18人が選ばれることになる。そこからが東京五輪代表としての本当の戦いになるが、チームの立ち上げから4年半、今回のメンバーから外れた候補の選手も含めて、ラージファミリーの全員に「お疲れ様」を伝えたい。

取材・文●河治良幸

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